代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

小沼さん写真logo_facebook.jpg「自分と時代を切り拓いてこそのギャップイヤーではないか?!」


NPO法人クロスフィールズ
代表理事 小沼大地


ギャップイヤーは"目的"でなく、"手段"であるべき
 僕のようなまだ何も成し遂げていない未熟者が何かを論じるのには抵抗もあるが、学生時代にギャップイヤーを経験した人間の一人として、これからギャップイヤーに挑戦しようとする人たちに向けて、自分なりのメッセージを伝えてみたいと思う。

 ここのところ、身の回りでも「ギャップイヤー」という言葉をよく耳にするようになり、この新しい文化が確実に日本社会に浸透し始めていることを感じる。だが一方で、ギャップイヤーという行為・制度がこうして大衆化していく過程に、ある種の危惧のようなものも感じている。


「○○さんに憧れて、自分もギャップイヤーをしてみたいんです」
 こういった言葉には、どこか、ギャップイヤーを「手段」ではなく「目的」として捉えている響きがあり、危うい気がしている。


未知なる自分を切り開くための「手段」と「時間」がギャップイヤー
 JGAPのウェブサイトの「私のGAP YEAR時代」欄にインタビューが掲載されているような皆さんは、ギャップイヤーでの経験を経て、社会に大きな影響を与えるお仕事をされている素晴らしい方々だ。では、なぜ彼らがギャップイヤーを契機に大きく飛躍することができたのか。それは、決して「ギャップイヤーという期間を過ごしたから」ではなく、ギャップイヤーの期間に「勇気を持って新しい何かを切り拓くような経験をしたから」だ。ギャップイヤーとは、その行為自体に価値のある「目的」ではなく、未知なる自分を切り拓くための「手段」と「時間」でしかないのだ。


中東シリアでのかけがえのない経験
 実は僕自身も、大学院入学と同時に休学をして青年海外協力隊に参加し、22歳から24歳までを中東シリアで過ごしたギャップイヤー経験者(gapper)だ。今は、このときの経験を活かしてNPO法人クロスフィールズという組織を立ち上げ、動かすようになって、ギャップイヤーによってかけがえのない経験ができたと思っている。


皆が就活する中、"得体の知れない"選択だった
 僕が協力隊に参加するかどうかを悩んでいたのは、周りの友人たちが一斉に就職活動を始めた時期だった。周囲に僕が協力隊に行くという話をすると、「なんでお前はそんなにもったいないことをするんだ」と口々に言われたのを覚えている。当時体育会系の部活で主将をしていた自分は、普通に行けば色々な企業に入るチャンスも高いのだから、協力隊という"得体の知れない"選択をすることでそのチャンスを捨てるのは「もったいない」というのが大半の意見だった。


「明日の常識は今日の非常識が創る」という言葉
 もちろん、僕もそんな状況ですぐに決断をできたわけではない。色々な人たちの意見を聞き、悩みに悩み抜いた。それでも、この時期にある尊敬する先輩から教えてもらった「明日の常識は今日の非常識が創る」という言葉が刺さった。結局、就職活動を一切せずに協力隊に参加するという決断になった。当初は不安で一杯だったが、今はこの決断こそが、今の自分につながっており、これまでの人生で最良の決断の一つだったと思っている。


孤独覚悟のレール逸脱
 レールを外れることは、とても勇気がいることだ。なぜなら、一般的な常識とは違う方向に進むこととは、一時的に孤独と闘わなければならないという厳しい選択だからだ。でも、その勇気を振り絞ることができなければ、自分のこれまで歩んできたレールの延長線上には絶対に見えないような「何か」に出会うことはできない。自分の想像をはるかに超えた挑戦と成長の機会とは、自分を縛りつけていた枠から飛び出すことによってのみ得られるのだ。


"ギャップイヤー"は新たな時代を切り拓くものにしてほしい
 予言めいたことを言わせてもらうと、近い将来、多くの若者たちがギャップイヤーを普通に経験するという時代が必ず来る。そんな時代が目前に迫っている今、周囲の仲間たちの10人中10人が「そのギャップイヤーの過ごし方は素晴らしいね」というような経験には価値はなくなっていく。周囲に流されるようなギャップイヤーを過ごしてしまったら、それこそ、人生最良の挑戦のチャンスが「もったいない」と僕は思う。せっかくギャップイヤーをするのであれば、これまで誰も挑戦していないような、新たな時代を切り拓くようなことな挑戦をしてほしいと思う。

 さあ、今こそ、世の中の常識を打ち破るような、すごいギャップイヤーをしよう!

 自分の枠を超えて、誰も見たことのない未来を切り拓こう!


プロフィール
小沼大地
一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。世界経済会議(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)ジャパン2011に選出される。
2012年1月3日付日経新聞で「C世代」として紹介される。
(注) 「C世代」とは、"20代の若者が社会をけん引する"コンピュータ(computer)を傍らに、
ネットでつながり(connected)、コミュニティ(community)を重視。変化(change)をいとわず、自分流(create)を編み出すという意味。
BLOGOSの記事※サイト・リニューアル(化粧直し)のためリセットされたが、10,000PV(閲覧ページ)があった:http://blogos.com/article/18953/?axis=b:342
NPOクロスフィールズ「留職プログラム」:http://crossfields.jp/
Twitter:@daichi0715

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