熊平智伸
ブラウン大学2年
日本では、自由時間多い大学生活に悶々
「慶應卒の学歴に500万と4年間を投資してるんだ。僕たちは教育を受けに大学に行ってるんじゃない。」
この同級生の言葉は、私が大学に入って感じていた満ち足りない思いを象徴していました。教授は教師というよりは研究者で、執筆した教科書を読んでいるだけという授業も多く、ほとんどの学生はただノートをとるために講義に出ていました。
ほかの学生を見回しても、意欲のある学生ほど独学したりダブルスクールに通ったり、インターンやNPOで活躍したりして、大学教育から何かを得ようとはしていないようでした。
日本の大学は学生にかなり自由な時間を与えていますが、具体的な進路に見当もつかなかった自分にはかえってそれが苦痛で、「もっと何かできるはずだ」と毎日自分に問いかけながら、悶々とした日々を過ごしていました。
留学に興味を持ったきっかけは来日していたハーバード大学長の言葉
大学入学後まもなく、ハーバード大学のファウスト学長の来日を歓迎するパーティーに参加した時のことです、「学部が提供するのは、表面的なブランドではなく、リベラルアーツの過程で将来人間として有意義な人生(meaningful life)を生きるためのツールを提供することだ。」という学長の言葉に、衝撃を受けました。幅広い分野の学問に触れる中で、膨大なインプットとアウトプットを繰り返し、一生ものの実力をつけるという考え方は、日本の教育を当たり前に受け入れてきた自分には全く新しいものでした。
実際に真剣に調べてみると、自分の求める環境はアメリカの大学にあるとますます確信するようになりました。熱意ある教授陣。アグレッシブな学生たち、新しくことを起こそうとする人を応援するカルチャーや雰囲気、ブラウンのリベラルな環境、そうしたものに強く心惹かれていきました。
ブラウン大に通学して気づいたこと
アメリカに来てみて、いつも同級生や教授から聞かれることがあります。それは"Why?"です。出身などのバックグラウンドやスペックよりも、なぜブラウンに行こうと思ったのか、どうして専攻の分野に興味をもったのか、といったようにその学生の個人的なストーリーや動機が重視されます。自分の心の声に耳を傾け、アイデアや思いを表現する大切さは、ブラウン大で特に感じています。
自分の人とは違った意見や見解を表現することで、コミュニティの多様性に貢献することが必要だと気づかされました。そのためには、自分の思いに正直でなければ意味がないと思います。
外に出てわかった極めて高い日本人への評価
アメリカに行ってみて、日本人への評価の高さにまず驚きました。日本人は勤勉で、ハイテクで、おもしろい。また3.11の震災での日本人の礼節ある行動に、多くの米国人が尊敬のまなざしを向けていました。日本にいると、ついGDPで中国に負けたとか、少子高齢化のニュースとかマイナス面ばかりに注意や関心が向いてしまいがちですが、こういう閉塞感ある時だからこそ留学にとどまらず思い切って海外に飛び出して、ものごとを違った角度から見つめるみるのもいいのではないかと思います。
私自身、実際に編入してみるまで、自分でやっていけるだろうか、退路(慶應の学籍)を断ったのは間違いではないかと最初は不安で仕方ありませんでした。でも、わからないから行ってみる価値がある、行く前からわかるようではわざわざ行く意味がない、いまはそう信じています。
プロフィール:
熊平智伸
慶應義塾大学1年の夏に一念発起して編入を決意、半年の出願準備を経て、2011年秋からブラウン大学に2年生として編入。専攻は国際関係論。
Blog: http://tombear1991.jugem.jp/
Twitter: @tombear1991