代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「日本の社会課題解決のノウハウを世界のロールモデルに!~英国で考えていること」写真_浪江航一さん.jpg

浪江航一
明治大学国際日本学部3年(英国に1年課外留学、社会セクターでインターン中)


はじめに
 昨年2011年4月から某団体の1年間の留学プログラムを利用して開発学を学ぶためにイギリス、ロンドンにいます。12月まではウェストミンスター大学で開発学や都市計画の勉強し、現在は東ロンドンで地域住民に対して保健医療診断、雇用・起業支援、教育支援などの公共サービスを行っているチャリティー*でインターンをしています。

ローカルでソーシャルな流れにあるイギリス
 非営利のインターン先を選んだのは、2010年にキャメロン首相が掲げた「大きな社会」という社会像がおもろしろいと感じたのがひとつの理由にあります。
 「大きな社会」とは、イギリス国内で抱える貧困などの問題を解決するために、より多くの社会政策の権限を官から地域コミュニティー、特に地域に近いボランタリーセクター(チャリティーや社会的企業)に与えていくものと言われています*。

日本でも話題の"休眠口座"が使用される
 具体的な策として、約50万件あると言われている既存の休眠口座から約4億ポンドの資金を元手に基金をつくり、ボランタリーセクターの資金強化を目指すものや、より市民に開かれた社会活動を実現するために、ATMや携帯電話、SNSを利用した手軽に寄付ができる仕組みをつくるものなどがあり、国民みんなで社会問題を解決していこうという姿勢を感じ取ることができます。

地域に根差したチャリティーでインターン
 インターン先のチャリティー(社会セクター)は、先日もチャールズ皇太子が視察に来るなど、それなりに歴史のある団体です。私は主に雇用支援と教育支援の二つの部署で、お客さんの情報整理や電話応対、仕事を探しに来たお客さんの履歴書作成のお手伝い、基礎的なITの授業をバングラ出身のおばさんたちに行うなど、雑務からちょっとしたカウンセリング業まで様々なことをさせてもらっています。もちろんこの団体が提供するサービスはほとんど無料で、主な収入源は、EUからの補助金や私企業との協働で得るファンドで成り立っています。

 職場のある東ロンドンのタワーハムレット地区は、街を歩けばバングラ系やアフリカ系の移民を数多く見ることのできる、ロンドンにおける最貧困地区のひとつ。それにも関わらず、職場内の雰囲気はとても和やかです。職員の方をみると、バングラ系の若者もいれば、月曜日しか来ないよくしゃべるアフリカ系のおばさん、美しいイギリス人女性がいたりと、まさにロンドンの多様性を表しているように思います。

英国にいながら日本の社会問題が自分ごとになってくる感覚
 ありがちではありますが、外国にある程度滞在していると、否応なしに自分は日本人なのだということを思い知らされます。それと同時にじっくりと自問自答できるまとまった時間があるためか、「自分」という輪郭がはっきりしてきます。

 日本にいた時は正直、どこか他人事のように感じていた少子高齢化や莫大な国の借金、毎年3万人もの自殺者数、原発、地方の衰退などの日本の社会課題は、いつの間にか自分達自身が取り組むべき問題として感じるようになってきました。震災以降、もうお上にだけに頼る時代は終わり、これからはボトムアップで市民自らが様々なセクターと協働してアクションを起こしてく時代になってきていると感じています。

 課題先進国の日本には、こういった問題に対して新たなイノベーションを起こせる余地が大いにあるのではしょうか。

「日本の社会課題解決のノウハウを世界のロールモデルに!」
そんなビジョンを考えながら、春の足音が近づいてきたロンドンで暮らしています。


*1インターン先:The Bromley by Bow Centre http://www.bbbc.org.uk/
*2参考:Big Society http://www.cabinetoffice.gov.uk/big-society

プロフィール
浪江航一
Twitter:@koichi738
Facebook: Koichi Namie

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