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日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

黒住宗芳さん写真CIMG3691-2.jpg「僕が休学して留学したワケ~日本の"空気"ではなく、世界の"風"を感じよう!」

黒住 宗芳
オックスフォード・ブルックス大学
(立教大学経営学部3年=休学中)

はじめに
 数多くのメディアで海外に関する情報を簡単に手に入れられる時代になって、多くの人が、その一部だけを見て他国や人種に対して一方的なイメージを創り、世界をわかった感じになっているような気がしている。まさに以前の僕自身がそうだった。


僕が休学して「留学」を決意したワケ
 昨年春、震災後ではあったが、初めて台湾へ行く機会があった。その時の体験により僕の海外への目の向け方は一変した。
 "親日的"と言われる台湾だからこそかもしれないが、地図を広げているだけで「ようこそ来てくれた、何でも聞いてくれ。それより日本は大丈夫か?」と実に多くの方に声をかけてもらったことが印象深い。何故そこまで親切にしてくれるのかと考え尋ねる中で、彼らには、愛する母国にわざわざ来てくれた外国人をもてなす文化があると学んだ。

 喜び感動したと同時に、日本では外国から訪れる人に対する気配り自体少ないのではないかという疑問も抱いた。恥ずかしながら当時の僕には、日本は成熟した先進国なのだとたかをくくっていた部分があった。それが、謙虚な姿勢で他国から多くを学ばなければいけないという思いに変わった。事の「本質」は、自分の目で見て確かめないと掴めないということもこの時に学んだ。日本について、日本人としてどうあるべきかと、答えの無い答えを模索した。そして自分がいかに「世界知らずか」と気付かされた。また、日本占領下時代からの年配の方々から当時のお話を伺い、自分は日本のことも大して分かっていないという深刻な事実も突きつけられた。

 帰国後、まずは自分に何ができるだろうかと考え、1ヶ月間の募金活動や被災地訪問など、震災復興のために出来ることに動いた。今思い返せば、正直それまでの2年間は「何かを成し遂げたい」という漠然とした気持ちのみが先行し、あれこれ手は出しつつも「筋の通っていない」「芯のない」大学生活だったと思う。だが福島県の避難所でボランティアをさせていただいた際、テレビなどで見聞きしていた以上に厳しい現状を知り、「このままではいけない」という思いが弾けた。自分に今何が出来るかを考え、それに全力を注ぐべきだと感じた僕はまず、自らの力と「経験値」を高めるべきだと思った。日本でやらなければいけないことがあると感じつつも、少しでも早く世界を学ぶことが今自分のやるべき事だと確信し、留学を決意した。

 横並びの風潮が否めない全体主義、あるいは画一主義の日本で得られることにはどうしても限りがあり、留学という選択肢は自分の今の年齢で世界から学び、日本を掘り下げられていることは何事にも変え難く、得がたい経験である。


「留学」が与えてくれたこと
 たったの1年間だが、「拠点」を海外に移せた意味は大きい。まず、こちらの学生の勉強量は一般的な日本の学生と比べて格段に多い。そのような環境に身を置いて、日本でもっと勉強しておけばよかったと後悔した時期もあったが、僕自身もすっかり勉強モードになれていることは一つの大きな進歩だと思う。

 冬休みには1ヶ月間、欧州5ヶ国14都市を一人旅し、徹底的に自分自身と向かい合うことができた。加えて留学生活では、日本だとあり得ないような多様な人や機会との有難い出会いに恵まれており、更には東洋の中の日本という観点から母国を掘り下げられる。
 その中で感じている大きなことは、「同じ東洋人同士、無駄な差別意識は取り払い、競い支え合うべきだ」ということ。僕たち世代は、良くも悪くも複雑な歴史感覚に疎(うと)い。彼らと日常を共にする中で体感したが、東洋諸国からの留学生との間に感情的な溝はない。性格や価値観の違いにおけるトラブルは付きものであるが、お互いに認め尊敬し合えていると感じている。むしろこの現状をチャンスと捉えるべきだ。

 このような思いを持って、先日スペインで行われた世界最大級のITイベントに参加した。もっと英語ができれば、全世界から集まってきていた企業人とより深い話ができたという反省点は残るが、まだまだ勉強も経験も不足している今の僕には充分すぎる刺激となった。数年前まで、この分野の中心は欧米企業だったことに対し、今では注目度や勢いと共に、中国や韓国勢が圧倒的に形勢逆転していた。ITのみならず、主流に日本が乗り遅れていることは非常に考えさせられる「真実」だった。

 このまま過去の栄光を鼻にかけ、プライドにすがっているようでは、日本は間違いなく置いていかれる。僕達はまず、もっと「謙虚」に現実に向き合わなければならないと思う。


「大きな動き」と「小さな渦(うず)」の集積を!
 日本の外に身を置いたからこそ初めて気づけた日本のことがある。言うまでもないかもしれないが、日本のモノやサービス、文化は非常に高レベルだと再認識している。だが外国人にとっては「特殊」と思われることも多いということを知った。故に、誇りあるこれらのものを上手く変換し、海外へ発信したいという思いが生まれた。つまり、海外に出て日本への愛が強まったとも言える。

 世界への発信と同じくして国内を盛り上げる動きも不可欠だ。日本発信は地方からでも出来るだろう。僕は第一に、故郷である岡山の活性化を志している。すでに全国的に町おこしや村おこしを目指している人は多く、将来的には、あちこちで生まれる小さな動きの"渦(うず)"を繋げていくことが出来れば面白いと思う。

 これらに代表される「大きな動き」と「小さな渦」が垣根を越えて同居するとき、真の日本復興や再生、そして「国際化」が実現できるのではないだろうか。


日本の「空気」ではなく、世界の「風」を感じよう!
 今後の日本を担っていくのは僕たち若者だ。そんな若者の一人として、かつての華僑のように「和僑」として海外経験を更に積み、日本のために活躍することが僕の夢だ。刺激の少ない日本の「空気」に流され、本質を掴めなくなるのではなく、世界の「風」を感じ、能動的に自らを高めることが何より必要だと信じている。手段は何だっていいし、言わば「ノリ」でだっていい。変化を恐れず、まずは"えい!"と世界に飛び出してみてはどうだろうか。出て何をするかは皆さん次第。出た暁には、日本では知りえなかった新しい「世界」が待ち受け、何かを学ぶことができるはずだ。


おわりに
 留学させてくれている家族と、いつも支えてくれている友人達には心から感謝している。
最後に、敬愛する加藤嘉一さんのお言葉をお借りして声を大にして言いたい。「若者よ、鳥カゴから飛び出せ!!」
 

プロフィール
黒住 宗芳
Twitter: @yoshiii0218
Email: yoshiii0218@gmail.com

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