代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

田澤さん写真IMGP4501.jpg「ユーラシア大陸横断自転車~"土臭い"場所での出会いの中で、人間らしい人々の姿を見つけた」


田澤儀高
横浜国立大学大学院教育学研究科2年


1年間休学して僕がしたこと
 大学からの知り合いであり、もはや腐れ縁の友人、加藤と一緒に、ユーラシア大陸を自転車で横断しました。1年間の旅の中で、僕たちは出会った子どもに短い糸を渡し、次から次に結んでもらい長い1本の糸にしていくという活動をひたすら行ってきました。


旅の目的と結果
 学校教育の勉強をしていた僕らが活動の対象を子どもにしたのは自然の成り行きでした。この活動、ちょっと無茶でアホっぽいところが僕はいいと思っているのですが、ちゃんと意味を持っています。これをやる目的は、糸を結ぶことで世界とつながるという感覚を子どもたちに感じてもらうことです。目で見て、触ることのできる人と人との世界規模の「つながり」を生きた感覚で感じてもらいたい。そして世界は大都会だろうがアルプスだろうが砂漠だろうがジャングルだろうが、どこにでも人はいて、"糸を結ぶ"という行為でもって、みんなが同じ目線で同じようにつながっていくことができるという思いを共有したかったのです。最終的に大陸中の子ども5000人以上が糸をつなぎ、その長さは1000メートルにもなりました。


自転車で旅をする
 自転車は早すぎず、遅すぎず、地元の生きた空気を全身で感じ、そこに広がる自然や人々の暮らしが間近に感じられます。森の香りも、磯の香りも、真夏の強い日差しも、雷鳴の鳴り響く嵐も、まるごと全身で受け止めることができます。そして、そこで暮らしている現地の人々のど真ん中をぶっちぎって行くのです。畑で野菜を収穫する人々や、山の斜面で羊を追う羊飼い、ロバで物を運ぶおじさん、モスクでお祈りをする人々、道ばたで遊ぶ子どもたち。一人一人の表情が分かるほどに手の届きそうなすぐ近くを自転車で通り過ぎて行くのです。


「土臭い」人々
 僕たちが自転車で走る場所というのはほとんどが現地色のにじみ出るローカル地域の真ん中。それこそ日本人は初めて見るというような人々がいるようなところばかり。そこには、金儲けとかのために外国人用のおもてづらを持った人ではなく、純粋にその場所で暮らし、物珍しげなまなざしで僕たちを見つめる人たちがいます。なんというか、現地の暮らしにとけ込んだ土の香りともいうべきものが体に染み付いた人たちにたくさん出会えるのです。


人間らしい姿
 「土臭い」土地を走っていて人と出会い、よく思うのが、「人間らしい」ということ。カザフの砂漠の真っただ中で水道も電気もないような場所で暮らす人々。ウズベクの荒野の中で僕に羊の肉とウォッカすすめる蜂蜜売りのおじさん。ラオスの山里のお寺の僧侶。バングラの道ばたで素っ裸で走り回る子どもたち。みんななぜだか"人間らしい"と思えるのです。物があふれかえる日本とは対照的に、物が少ない貧しい暮らしをしていて、中には水や食べ物だって貴重な場所でも、みんな平気な顔して暮らしています。それどころか泊めてくれたりごちそうしてくれたり、僕たちを助けてくれようとさえしてくれます。
 お金がなく物が少ないが故に余計な欲望に染まっておらず、限られた物で暮らしていくことは当たり前のこと。身近な人たちと関わり合い、笑いあったり助け合ったり、ときにぶつかったりもしながら、貧しかろうがなんだろうが生きて行くために生きて行くという本来の人間らしい姿を見たように思いました。僕たち日本人から、お金や地位や名誉とかを全部はぎとって、彼らと同じような舞台の上に立ったときに、いったいどのように見えるのかということを考えさせられました。


日本から飛び出す
 糸で子どもをつないでいくという1年間のプロジェクトを通して、結果的に僕自身が得たものは大きなものでした。日本を離れたまったく異なる土地の異なる文化、宗教、人種の人々と現地の空気にとけ込んで接するという経験は貴重でした。日本での価値観が、広い世界に点在する多種多様な価値観のごく一部のものに過ぎないということを思い知らされました。そして、そんな文化や人種の壁を越えて、お互いが心を開けば心を通わせることができるのだということを身をもって感じることができました。 
 思い切って日本を飛び出してみると、日本にいるだけでは学べないことをたくさん学ぶことができます。それは必ず将来いろんな物事と向かい合って生きていく自らの人生の糧になっていくと信じています。

※この前のエッセイは、一緒にツーリングしていた加藤さんが書いています。対でお楽しみ下さい!(JGAP)

田澤 儀高(たざわ よしたか)
Email: sawa.116.dsawa@gmail.com
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facebook: Yoshitaka Tazawa
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