代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「青年海外協力隊のススメ~商社勤務3年半後の転進」JICA中川さんJgap写真.jpgのサムネール画像


中川 広海 Hiromi Nakagawa
JICA青年海外協力隊 H22年度4次隊
ウガンダ共和国派遣 村落開発普及員
RUCID(有機農業NGO ミティアナ県)配属


自己紹介 私はJICA青年海外協力隊 村落開発普及員として、東アフリカのウガンダ共和国で活動中です。現地では有機農業NGO(RUCID)の職員として、配属先近郊の農家(約100世帯)を対象とした有機農業の巡回指導や、農家グループ7件(5~25名/組)の収入向上活動(例:換金作物栽培、家畜飼育、植林)支援に取り組んでいます。将来は仕事として国際協力に関わりたく、来秋より英国の大学院修士課程に進学予定です。


協力隊に参加するまで
 私は大学卒業後、専門商社の営業職として約3年半勤務した後に、協力隊に参加しました。協力隊を志したきっかけは、前職で経験した上海駐在です。赴任当時、2010年に上海万博を控え、加速度的に開発が進む都市部と、郊外・農村部との社会格差は広がる一方でした。私はこうした経済成長の弊害を身近に感じ、近い将来、プレイヤーとして途上国の社会問題解決に関わることを明確に意識しました。また、頭脳明晰・数カ国語を操る中国人の友人が、低賃金を厭わず身を粉にして働く一方で、将来を見据えて自己研鑚に励む姿に、 フリードマンが提唱する「フラット化する世界」の到来を予感しました。

 当然のことながら、安定した生活を捨てて未知の世界に飛び込むまでには、様々な葛藤が有りました。最終的には、リスクとリターンを天秤にかけ、協力隊参加が今後の人生にポジティブな影響をもたらすと判断しました。


協力隊参加に際しての懸念事項
 協力隊参加に際して、最も懸念したのは「専門性の不足」です。上海駐在時、業務で英語を用いていたことから、語学力や現地での生活環境は、それほど心配していませんでした。しかしながら、農学知識の不足は顕著で、栃木県のアジア学院にて数週間の技術補完研修を受講した以外に、特筆すべき農業経験を持たない私が、アフリカで農村開発に携わることなど出来るのだろうか。そして不幸にも、私の懸念は間もなく現実となりました。


現地で直面した2つの問題
 私が配属された有機農業NGOは、普及・食品加工・専門学校の三部門に分かれています。私は普及部門に配属されましたが、配属先が援助機関からの資金援助を打ち切られた影響で、同僚は不在。私は単独での活動を余儀なくされますが、程なくして2つの問題が発覚します。1つ目は、村人のほぼ全員が英語を解さないこと。当地で現地語訓練を修了したとはいえ、挨拶程度の語学力では、住民とのコミュニケーションもままなりません。2つ目は、前述の農学知識の不足。言葉による意思疎通が図れない以上、農場や飼育場の様子から現状を窺い知るより他がありませんが、それすらも不可能である以上、なすすべがありません。


問題解決に向けた動きとウガンダ人の友人の支え
 問題解決の契機は、本年3月に配属先専門学校を卒業したウガンダ人の友人と、二名体制で働くことになったことです。彼は以前から、授業の合間を縫って私の活動を手助けしてくれましたが、私の働きかけに応じて、卒業後は配属先でフルタイムワーカーとして働くことになりました。彼は地方出身で農村事情に明るく、野菜栽培・家畜飼育の分野において高い専門性を有しています。また、彼の参加により語学の問題が解消されました。その結果、有機農業の実地指導や家畜の疫病診断といった、高度なサービスを提供出来る様になりました。他機関への就職が決まっていたにも関わらず、私を信頼して、大きな決断を下した彼に対しては、感謝の念と同時に強い責任感を感じています。


ギャップイヤーの選択肢として~「海外協力師」
 ギャップイヤーの選択肢として、協力隊参加を検討中の方には、山本敏晴先生の「国際協力師になるために」を一読することをお勧めします。本書にはプロの"国際協力師"になるための具体的な道筋が書かれており、私がキャリアチェンジを試みる勇気をもらった一冊です。詳細は書籍を参照頂きたいのですが、著者は国際協力のエントリーポイントとして、協力隊への参加を勧めています。私の場合、途上国NGOの現地職員という立場で、住民に限りなく近い場所で農村開発に携わっていることも、大きな利点です。当地での現場経験は、将来、マクロな見地から国際協力に取り組む際に、必ずしや活きるものと確信しております。


最後に~「海外との距離感」
 今でこそ遠くアフリカの地で生活する私ですが、かつては日本国内も満足に旅行したことがありませんでした。そんな私が変わるきっかけになったのは、学生時代、沢木耕太郎さんの「深夜特急」に憧れて始めた、海外一人旅でした。未知の土地での異文化体験や新しい人との出会いは、私の好奇心を強く刺激しました。以後、私が重大な意思決定(例:商社への就職、協力隊参加)を行う際は、「海外との距離感」を判断材料にしてきました。

 皆さんも、"一生の財産"と成りうる貴重な経験を積むべく、協力隊やギャップイヤーといった制度を、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

プロフィール
2011年3月より、JICAボランティアとしてウガンダ共和国(ミティアナ県)に在住。協力隊活動終了後は、英国の大学院修士課程に進学予定。プライベートでは、本年5月に日本で婚約者と入籍。明るい未来を描いています。
Twitter (@nakagawah2) :http://twitter.com/nakagawah2
Facebook: http://www.facebook.com/hiromi.nakagawa.9066
Blog (Always for you) : http://hirominakagawa.tumblr.com/

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