代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

profile-photo.jpg「ケニアでPCを教える日常で想うこと」


望月 学
JICA青年海外協力隊 ※ケニア共和国 派遣中


ある日のケニアの"日常"
 コンピュータの修理実習、1台のPCを10人程の生徒が群がり、分解・組立を行っている。しかしそのPC、元々壊れていて動かない。また基本的なPCパーツや修理工具も、学校が用意できないので苦肉の策でプリントを見せて説明する。教室は4畳半程、そこで学生相手に講義をするが全生徒分に椅子・机もあるわけではなく、中には長机の上に座って授業を受けている者もいる。日本の学校や講習だと、普通そんなことはありえない。が、ケニアの、それも地方の専門学校だと、これが日常の光景となる。ところ変われば、常識も変わるということだ。


ここで、何ができるんだろう・・・
僕は今、青年海外協力隊員として、ケニアの西部、ウェスタン州カカメガ近郊にある技術専門学校でコンピュータを教えている。ここで、コンピュータのハードウェアを中心として学生相手に授業を行っている。しかし、上述のように設備、環境共に日本に比べたらはるかに劣るような中で、いったい自分は彼らに何が残せるのだろうかと模索する毎日を送っている。


日本の"当たり前の日常"は、当たり前でないことを実感
 ケニアでは貧富の格差が大きい。首都ナイロビでは、ベンツ、BMWといったヨーロッパ車が走り回っている高級住宅街がある一方、1日数ドルで暮らしている世界最大級のスラムも存在している。また地方に目を移してみると、電気は商店と地元の盟主の家だけ、水は共同井戸から汲んでくる、そんな田舎の集落もまだいくらでもある。ここでは、日本でのいつもの生活が、決して地球上どこでも同じようにはできないのだということを、ごく普通に教えてくれる。そのことを頭で想像するのと実際に体験するのでは、やはり心に染み入ってくる理解が明らかに違う。水道の蛇口から水が出る、今日一日停電しなかった、日本で暮らしていると、何バカ言ってんだ、と思うような出来事が、ここでは心底有り難く思えてくる。途上国を訪れると、多くの日本人は日本という国の素晴らしい点を、改めて様々な点から気づかせてくれるはずだ。


さまざまな"人"の交錯(こうさく)を感じる日々
 当地ケニアでボランティアをする前は、「途上国で暮らす貧しい人達」、「社会的弱者に追いやられている人達」、そういった人々をひとまとめにして"可哀想な"人達とステレオタイプのように思い込んでいた。しかし実際ケニアで暮らしてみると、完全にその考え方が壊され、彼らに対する見方が変わった。ここで暮らしていると、途上国の人達というスコープでしか見ていなかった彼らも、日々の生活を営んでいるわけで、その生活の暮らし方や生き方、考え方は千差万別である。正直者で誰に対しても善良な人、隙(すき)あらば金を掠めてやろうとする人、与えられた仕事を一生懸命にこなそうとする人、仕事をさぼってばかりの人、僕の周りには様々な人々がいる。

 また少ない収入の中、子供の将来の就学のためになけなしのお金を貯金をしている人もいれば、アルコールに使ってしまう大人もいる。本当に当たり前のことだが、彼らもこの土地で日常を営んでいるわけで、そこには、「貧しい」とか「弱い」というフィルターをかける前に、一人一人、人間としてのありのままの姿を見ることができる。実際に自分の足でその土地で暮らしていく、そこで途上国の現実と日常とを体験として会得(えとく)する。そういうことを踏まえて、「途上国開発とは」、「ボランティアとは」、ということを深く考えさせられている。いつか日本で暮らしている人々に、その体験の雫(しずく)をおすそ分けする、そんなことができればなと思う。


JICAボランティアはユニークなギャップイヤーの選択肢
 最後に、どのようなギャップイヤーを送るかだ。選択肢は多種多様に枝分かれをしているが、海外、特に途上国というまったく異質な世界に飛び込んでみるのはお勧めだ。その中でもJICAボランティアとしてギャップイヤーを過ごすということは、現地で生活をしてローカルの人々と一緒に仕事をすることと同義になる。深く海外を見聞してみたいという人達に、旅行者の視点、転勤で海外赴任する者の視点、その両者とも異なる、JICAボランティアでしか味わえない特別な視点を与えてくれるであろう。


プロフィール
名前:望月 学
ブログ:ケニア、種を蒔く http://tanewomaku.exblog.jp/
ツイッター:@modulenightowl
フェイスブック:http://www.facebook.com/gakum1

略歴:
早稲田大学理工学部、同大学院理工学研究科卒 コンパックコンピュータ株式会社(現日本ヒューレット・パッカード株式会社)に入社。その後、システム開発会社、ワーキングホリデー等を経て、JICAボランティア(青年海外協力隊)に参加。

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