代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

比留川さんCool Japan写真.jpg「ベトナムの"世界遺産の街"ホイアンでお土産屋さんを開く」


比留川 由希
Cool Japan in Hoi An 店長


きっかけ
 初めは将来海外で働こうとは全く考えていませんでした。ただ、色々な生き方について関心があり、学生時代も、様々な人生(人)を高校生に紹介するNPOで手伝いをしていました。

 私が海外で働くことを考えたのは、社会人4年目のある時、「海外で働く」というテーマのイベントがあり、会社でもなく、単独で海外で活動している若者がいることを知ったことがきっかけでした。彼らの生き方は、知れば知るほど面白そうでした。ベトナムと日本を行ったり来たりしている人たちが、何故か生き生きしているように見えたのです。


ベトナム生活を決断するまで
 海外に関心を持った私は、5日間のベトナム中部(ホイアン)旅行、その後2週間のホイアン現地調査に行きました。
それらの調査を経て感じたことは、「人とのつながり」「エネルギー(活気)」「街と人のあたたかさ」といったようなものがベトナムにはあふれているということでした。 ベトナムを拠点に、日本ではあまり感じられなかったものを日本にも届けたいと考えました。また、私自身が異なる考え方に触れることで、「こうでなければいけない」という、多くの日本人の行動を制限させている"思い込み"に気付き、自分が変わって、それらをなくしたいとも思いました。

 また、それまで様々な生き方の調査やレポートすることにも関心がありましたが、周辺に女性で海外に単身で行った人があまりいなかったこともあり、自分でそういうケースを作りたいという気持ちがこの調査以降、日に日に強くなりました。

 最終的な決め手は、過去一度も海外で生活したことがなかったので、「とにかく行ってみよう!」と"思い切った"感じでした。


そこに"求人情報"なんてなかった
 "ホイアン"という街は昔、日本町があり、古くから日本と交流のあった場所で、400年前から続く街並みが世界遺産となっている、芸術的な素敵なところです。 私は街の名前や景色が気に入ったこともあり、日本と縁のあった点にも惹かれ、ホイアンで生活することに決めました。

 ベトナムでは街が日ごとできていく様子やこれから生活が良くなっていく最中であり、まだ日本ほどサービスが溢れていないので、比較的ゼロからの仕事が始めやすい状況にありました。しかし、ホイアンの街に関しては"求人情報"なんてものは、残念ながら見つけることはできませんでした。 日系企業がある場所でもなかったので、当然のことながらウェブにも全く仕事に関する情報がありません。

 暗中模索していたところ、隣街のダナンの知り合いが、ホイアンで一番大きな「オーダーメイド衣服&お土産店」が、日本人のお客様をもっと増やしたいと考えていて、その店のチラシを作って配布してみたらどうかという話をくれました。前述の2週間の現地調査の際にそれを行い、その活動の結果から、その衣服店に日本人集客促進のための企画書を作ってベトナム語通訳ができる方たちと一緒に持って行きました。そして2010年12月29日。その時は、まだその仕事が確定していた訳ではなかったのですが、その仕事を行うつもりで、とりあえず出発しました。

 現地に着いて、無事その仕事が決まり、年が明けて2011年1月4日より初めてのベトナムでの仕事がスタートしました。


お土産屋さんを開店
 6ヵ月間その衣服店の仕事をした後、ベトナム人の友人が大学卒業間近で、卒業後の進路やキャリアのことを聞いたところ、ホイアンは似たようなお土産ばかりなので、新しいお土産やサービスを作りたいと答えてくれました。

 私は彼女と一緒に働きたい、そして彼女は芸術のセンスがあるので、それを活かしたいとも思いました。また同じ頃、ホイアンで出会った日本人とも、ベトナムに拠点を作ろうということで意見が合い、その方がオーナーとなり、3者で店をスタートすることになりました。

 とはいうものの、お土産屋さんの仕事は本当に「言うは易く、行うは難し」で、地道な作業も多く、大変だなと感じています。
海外の観光地ゆえ、お客様は欧米人、アジア人と様々な国の旅行者がいて、日本の商品を販売するにしても、どんなものが売れるのかが掴みづらく、これまで多様な商品を試してきました。また日本で仕入れる商品はどうしても輸入になり値段が高めなので、可能なものはなるべく品質管理しながら、現地で生産することも考慮しなければなりません。

 また物件の関係上、決めてからすぐにオープンしたため、昨年2011年9月の開店日は、品揃えについては、店内の入り口にショーケースが一つあっただけでした。

 現在は、開店1年を越え、着物ガウンやアニメフィギュアなど、日本から輸入したり現地で制作した伝統的なものから現代的なものに加えて、ベトナムの素敵なお土産などを販売しています。一つ、また一つと、新たな商品ができていくのは面白いです。

海外で働く大変さと面白さ
 ホイアンでは年に一度洪水が訪れます。昨年はお店も1階が完全に浸水し、大変苦労しました。ベトナム人はいわば"慣れて"いて、通常のことのように店の荷物を2階に上げて、終わった後は、せっせと掃除してすぐに通常営業に戻っています。日本人が持つ"衛生"概念を超えた自然と共に生きているというたくましさを感じて、感動したのを覚えています。

 また観光地なので、欧米、アジア圏と様々な国の人と交流がある点も刺激があります。 せっかくこのような体験ができる場所ができたので、多くの日本人も訪れる場所になったらよいなと思っています。インターン生の受け入れも行っており、過去に2名の方がこちらに来て活動をされました。

 日本の良さを改めて実感したり、また日本には様々なものが溢れていますが、それに比べるとこちらでは作り上げる面白さがあります。年に一度の日本との交流のお祭りである「ホイアン日本祭り」のイベント出展に関わることができるのも楽しい点です。

 私個人としては、あまり整っていない環境で店づくりをしてきたためか、自立精神が芽生え、馴染むというより、何かを変えたり作っていく意識が強くなったように思います。

 海を少し渡った先に、熱気があり、日本人とも近い感じがする魅力的な人々が住んでいるということは、「外国」「海外」という言葉では遠さを感じてしまう気がしています。

 日本とは、本州から四国に行くような感覚で、見に行ったり、時には協働できたら素晴らしいと思っています。

プロフィール:
比留川 由希
日本では大学卒業後、インターネット求人広告の会社にて、営業や制作・広告審査業務を3年半ほどしていました。その後ホイアンに移り、衣服&お土産販売を行う現地企業で働いた後、コンサルティング会社であるブルーマーリンパートナーズの出資の下、日本とベトナムの雑貨を販売するお土産屋さん「Cool Japan in Hoi An」の立ち上げに関わり、現在同店でキャプテン(店長)を務めています。

Twitter:https://twitter.com/hirubird
FaceBook: http://www.facebook.com/yuki.hirukawa.7
Mail:yuki.hirukawa●gmail.com (●部分を@に変更下さい。)
ブルーマーリンパートナーズ:http://www.bluemarl.in/

【JGAPひとくちメモ:ホイアン】ホイアンは、ベトナム中部の都市であり、ダナンの南方30キロ、トゥボン川の河口に位置する古い港町。人口12万人。中国人街を中心に古い建築が残り、1999年(平成11年)に「ホイアンの古い町並み」としてユネスコの世界遺産に登録されている。


記事一覧

フロンティア・フォーラムトップページへ戻る

アーカイブ