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日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

僕が"体育会系"應援指導部 ・就活・世界一周を辞め、インドの砂漠での"最貧困層向け英語教育"にたどり着いた理由T江口匠さん写真akumi Eguchi pic.jpeg


江口匠
慶應義塾大学商学部4年(休学中)
学生団体EFPOP代表


始まりは「レールなど、そもそもないのだ」と直感的に思ったこと
 僕は慶應に入った直後に應援指導部 という超保守的な団体に入り、そこで3年生の夏まで活動した。先輩には著名な政治家や実業家の方がたくさんいて、「普通にやっていればそれなりに"出世"もできるのかな」なんて邪(よこしま)な考えを持っていた。

 しかし、ある日友人に言われた。
「それが本当にやりたいことなのか?」と。
「いや、違う。でもやりたいことがわからない」
この会話をきっかけに、僕は退部を決意した。レールに乗っかってそれなりに出世するよりも、自分のやりたいことを追求することに決めた。それに、そもそもそんなレールなんて、この世に本当にあるのだろうか。


ブレブレの就活も説明会だけで辞め、休学、世界一周を決意
 昨年の3年の12月、結局僕はやりたいことがわからず、「私益と公益を両方追求したい」と訳のわからぬ考えを抱いたまま、各業種の会社説明会に参加した。某金融機関で「こんな時代なんで、個の力を伸ばしたいです。首切られたら大変ですし・・・」と言うと、「そういう人は求めてないよ。うちはチーム力でやっているから」と言われてしまった。「そうか、僕は求められていないのか」と思い、その他諸々あったが、結局就活は辞めた。それは、以下の理由からだ。

 「僕は今まで一番富裕な国の一番富裕な東京(正確には千葉)という地域で生まれ育ってきて、何も知らない。世界の大半を占める発展途上国の現状を見て、それからやりたいことを決めよう。それに就職してから世界に出るのは、今の日本ではまだまだリスキーだし、学生のうちに世界を周っておこう」

 これも何だか後に取って付けたような理由だが、休学し、世界一周を決意する。しかし、世界に出れるなら、本当は 何でも良かったのかもしれない。


インドのガヤの貧村をきっかけに世界一周も辞める
 中国で、偶然にもJGAPに寄稿している成瀬勇輝氏(No.46)にお会いしたのを始め、僕はアジア7か国を巡っただけで金持ちから物乞いまで、本当に色々な人に出逢えた。そこで学んだことは、「肩書きや地位や国境など、どんなタイプの境界にも縛られず、"人"単位で考えること」の大切さだ。僕たちが日本に住んでいるからと言って、シリアの内戦を放っておいてよいわけじゃない。僕が千葉に住んでいるからと言って、東日本大震災で被災した東北の人たちを放っておいてよいわけじゃない。そんな感覚だ。

 そして僕は、この旅の最後の"寄港地"となるインドの仏教の聖地ガヤに行く。偶然にもそこはインドで最貧のビハール州がある。気になったので、最貧の村に行ってみることに。その村では子供にも衣服がほとんどない。食器は泥水で洗い、家もぼろい。毎日1食食べれるかどうかなので、餓死者も出る。

 そこで出逢った村人に、言われた。
「こんな村に旅行者が来ることは滅多にない。ここには政府もNGOも助けが来ない。だから来てくれただけで嬉しい」
ボロボロと涙が出た。ほんとうに止まらなかった。
このできごとをきっかけに、僕は「貧困問題やるぞ!」という気になり、世界一周も辞めた。結局2か月半でアジア7か国を周っただけだったが、この(ほぼ)何の目的もない旅が僕の人生を変えた。英会話は、「習うより慣れろ」とばかり、この旅だけで習得した。


マイクロファイナンス企業でのインターンシップで幻滅したこと
 その後、僕は貧困問題をやるといっても、どうすればよいかわからなかったため、 マイクロファイナンス企業でインターンシップをすることに決め、インドのパンジャブ州にあるジャランダルという所へ行く。マイクロファイナンスは「貧困層への無担保融資事業」だ。しかし、僕が仕事をしていく中で、主要な顧客は「そんなに貧しくないじゃないか!」と気づいた。というのは、家もあり、調度品もあり、茶菓子も出るし、子どもは学校に行っている。「ガヤの子達は学校にすら行っていなかったのに!」と幻滅した。毎日すれ違うスラムの人たちこそ救うべきだと思った。しかし、彼らは文字の読み書きができず、融資の対象にはなりえなかった。ビジネスも文字で成り立っているため、そういう人たちにお金を貸しても元利が帰ってこないから当然といえば当然だ。


インドの砂漠での出会い
 インターンを終え、インド国内を1カ月旅した。西部のジャイスルミルという地域で、ラクダのガイドと二人で砂漠を歩いた。僕が「貧困層を助ける仕事をしていた」と言うと、彼に「僕たちも一日に一食子供にようやく食わしてやれるだけで、貧しい。助けてほしい」と言われた。

 「僕は何のスキルもないから無理」なんて思っていたが、「待てよ!」一つあった。それは「彼らに文字の読み書きを教えること」ではないか。それも英語で。あと、ちょっとPCも教えれば、彼らは自分でビジネスをできる!

 その後15日程、この"想い"の熱を冷ますために何も考えず旅をしたが、やはり「このアイデアに賭けてみたい」と決心した。今は来年の夏休みに、僕と一緒にインドの砂漠で英語を教えてくれる学生の仲間を募集している。また、ヒンディー語ができる人にも協力を仰ぎたい。僕自身は、11月14日からまたインドに旅立ち、2~3か月間、ジャイスルミルの砂漠で英語を教える予定にしている。


プロフィール
江口匠
慶應大学商学部4年(休学中)
3年生の夏まで應援指導部で活動。退部し、就活も辞め、休学、世界一周を決意。アジア7か国周遊後、世界一周も辞め、インドのマイクロファイナンス企業で約1カ月インターンシップ。その後一1か月のインド旅で「最貧困層への文字の読み書きの教育をしたい」というところにたどり着き、現在学生団体EFPOPを立ち上げ中。
ブログ「インドの砂漠で英語教えます」:http://blog.goo.ne.jp/somewhereabroad
Twitter:@EguchitakuMi90
Facebook:Takumi Eguchi
学生団体EFPOP(最貧困層への英語・PC教育事業)メンバー募集中:efpop.2012.startup@gmail.com
EFPOP公式ツイッター・アカウント:@efpop

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