代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「経営コンサルタント辞めて、ベトナムで"パティシエ見習い"になったワケ」荒島さん.jpg


荒島 由也
Star Kitchen Inc.(ホーチミン在住)


「転身」
 私は、現在ベトナム・ホーチミンにてクッキングスクールの創業準備をしている。
大学を卒業し、外資系コンサルティング会社に入社。以来5年間はスーツを身にまとい、クライアントと一緒に汗を流した。

ところが、いまはベトナムにてエプロンを身にまとい、ボウルに入った材料を必死にかき混ぜる。部屋にこもるオーブンの熱で汗を流し、お客様の喜ぶケーキを研究。

元々、料理・お菓子業界に縁があったわけでもなければ、それどころか料理は全くしない人間だったので、無謀ともいえるキャリア・チェンジかもしれない。


「違和感」
 元々ベトナムに来たのはソーシャル・ベンチャーを支援するプロジェクト(*1)を立ち上げるためだった。学生時代は社会起業を専攻し、マイクロファイナンスをバングラデシュで学んだ。経営コンサルを志望した理由も、社会起業の分野で将来何かするために経験を積むためだったので、社会人経験を5年経て原体験に戻ったということになる。

 プロジェクトを推進する中で、数十人のソーシャル・ベンチャー経営者と直接議論をする機会があった。そこで痛感したことがある。

「自分の語っていることは迫力がない」

 経営コンサルタントしての経験を活かし、ソーシャル・ベンチャー経営者にアドバイスをするわけだが、つくづく自分の甘さを痛感した。たった一人でやっている経営者だろうと、100人スタッフがいる経営者だろうと、やはり当事者として背負っているものが違う。特に社会的なミッションを背負っているから、一段と重い。

「じゃ、あなた自分でやったことあるの?」 

 そう問われているような気がした。外野で、あれこれ客観的にいう存在は重要だし、否定するつもりはないが、そういった負い目というか、違和感が自分の中で大きくなっていくのを感じた。

「ソーシャルとか社会貢献とか語る前に、まずは自分が経営者として成長しなければ」

そういった想いから、昔から自分で事業をやってみたかったのも相まって、起業を決意した。


「バブルに飛び込め」
 起業を決意したはいいが、何をやるかは決まっていなかった。

 他を圧倒できるほどのサービス・プロダクトを持っていない私は迷わず、今後成長余力のある市場を選択した。要するに経済がバブルを迎えるマーケットで軒先を構えていれば、成功確率は圧倒的に高いと考えたからだ。

 まずグローバルにみれば、今後10年は人口・市場成長率からアジアが魅力的だと判断。次に成長余力と新規参入障壁の観点からタイをのぞくメコン圏諸国を選択。後は実際に足を運んで、自分の肌で感じ取った感覚からベトナムを選択した。ラオス・ミャンマーも面白いかなと思ったが、まだ国内市場で何かを売っていくには早いかなという印象だった。

と、ロジカルに説明しなくてもベトナム・ホーチミンに住めばその勢いは体感できると思う。次々と建設される大型ショッピングモール、マンション、そして人々の消費意欲。

ここで勝負がしたい、そう思うようになった。


「Star Kitchen 創業」
 2ヶ月住んで、気がついたのはエンターテイメントの少なさ。特に「自分磨き」をするような趣味分野のサービスが未発達であると感じ、2週間ほどの調査を実施。

 結果クッキングスクールにチャンスを見いだしたので、その分野に決めた。また調査から「スイーツ」に対するニーズが高そうだったので、まずはスイーツを教えることにした。

「そんなに簡単に決めていいの?」と思う方もいるかもしれない。

 しかしここはベトナム。自分には馴染みもなく、予想もつかないマーケット。そのマーケットで成功確率をできるだけ上げるには、最短でサービスのプロトタイプ(試作)を作って、そこから試行錯誤していくのがいい。そう判断した。

名前はStar Kitchen。

  料理を通して家族と友人と、そして自分自身と「楽しくて輝く時間」が多く生まれるような、そんな新しいライフスタイルを提案したい。

 チャレンジはまだ始まったばかりである。経営者として力をつけつつ、ゆくゆくはソーシャル・ベンチャー支援にも力を入れたい。

 とはいえ、まずはクッキングスクール経営者として目の前のケーキを焼けるようになることが最優先事項である。

(*1)Cross-border Incubation Platform http://www.habataku.co.jp/wakyo/top.html


プロフィール
荒島 由也 (Yuya Arashima)
慶應義塾大学卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現IBM)に入社。一貫してクライアントの業務変革戦略立案・実行支援を行うとともに、社内でNPOへのプロボノサービスプログラム立上げにも従事。

現在はベトナム・ホーチミンでStar Kitchenを創業。駆け出しパティシエ見習いとして日々奮闘中。

Weblog: http://blog.livedoor.jp/starkitchen/
Facebook:https://www.facebook.com/yuya.arashima


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