代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「8760時間を手にした自分~"自分の無力"に気付くバックパッカーとしての旅」 1006 福本さん.jpg

福本佳祐
早稲田大学= 現在休学中、海外一人旅


 1年365日、時間に置き換えれば8760時間。「1年間休学する」=8760時間学校を休むことになるのか・・。

 実際に今年の4月から休学期間が始まりそこからの1年間は自分ですべてを計画し、行動する必要があった。自分の今回の休学理由は「旅をしたかった」これだけである。単純に世界を見て回りたかった。バックパックひとつ担いで自分でどこまで行けるのか・やれるのか確かめたかった。

 本当に、この理由しか持っていなかった。約半年経った今思えば、自分は旅をするために休学したのか、休学するために旅を始めたのか分からないくらいである。そう、まっとうな生き方から逃げたかっただけなのかもしれない。

 というのも、自分には大学に入学するまで思い描いていた目標があった。その目標を果たしたかった。今の大学に入りその目標を果たすため今の自分からは想像できないほどの努力もしたし、そのことに関しては今も頑張ったな!と自分でも認められる。情けないけれど、この目標を自分自身の手で手放してしまった。そう完全に挫折したのだった。自分にとっては大きな目標であっただけに、その目標を失ったときの喪失感は大きかった。

 勝手に「悲劇のヒーロー」になり、勝手に落ち込み続け、情けない状態になっていた時に父が何気なく言ってくれた「生き方は一つじゃないんだから。海外に行ってみるのもいいんじゃない?」---単細胞な自分の頭の中は「海外、海外、とにかく海外!!!」という感じになった。海外に出るだけで劇的に何かが変わるわけではないのに・・。

 手当たり次第に海外旅行のガイドブックや、サイトを開いては読み漁った。そんな時に、海外を長期で旅している人たちを「バックパッカー」ということを知ったと同時に、「何だか楽しそう!」「自分にぴったりなスタイルじゃないか!(何がぴったりなのかはわからないが)」それからは、友人に「バックパッカーで世界を旅してくる」という唐突なことを言って回る日々が続いた。

 自分という人間は、おそらく目的に向かって頑張ることが大好きで、目的がないと不安になって仕方ない、言ってしまえば「努力することが目的」と言われても仕方ない変な人間な気がする。要するにドМなのかもしれない(笑)。

 だから、「俺はバックパッカーになって世界を旅するために頑張ってバイトしたり、準備したりするんだ!」こう言えるようになったことが嬉しかった。

 何が言いたかったかというと、自分は誇れるような理由から休学を始めたわけではなく、極論を言えば、8760時間という時間を現実逃避するために頂いたというぐらいの贅沢な野郎なのだ。

 では、実際に旅に出てみてどうだったか。正直なところ、大きな変化があったわけでも、大きく成長したわけでもない。そう、特に変わっていないのだ。しかし、自分ですべてをやらなくてはならない状況で世界を旅し続けたこと。また、ほんとに多くの人に出会い交流をしたこと。これらの経験のおかげで気付けた感情がある。「俺って何にもできないな・・。」

 韓国人とマレーシアで自転車の旅を始めたこと。生きるために5か国語を使いこなしていたインドの物売りの少年と交流したこと。23歳の若さで、チベット人を支援する団体の設立者の元でお手伝いさせてもらったこと。騙されてお金を一瞬で失ったこと。インドでうんこを踏み続けたこと。ケニアの青年海外協力隊の方のワークキャンプに参加したこと。インドの田舎町の学校でゆで卵をひたすら剥き続けたこと。一人きりで入院生活を送ったこと。毎日の旅の様子や、様々な活動をブログやエッセーの寄稿でより多くの人に伝えたこと。また、それらの記事をより多くの人に読んでもらうために英訳する試みを始めたこと。

 どの場所でも、自分の力のなさを自覚せざるを得なかった。

 しかし、「何もできない自分」に気付くことで、一層「やらなくてはいけないこと」が見えてきた。結局、今回の旅の出来事、経験は単なるプロテインのようなものだと思う。自分の成長を手助けすることはあっても、出来事・経験が自分を劇的に変えてくれることはない。結局は自分が努力して自分の道を切り開いていくしかないのだ。こんな当然な、しかしながら、とても大切なことに気付くまでに私には8760時間いう時間が必要だったのかもしれない(まだその半分ほどしか経過していないが)。

 私がこの文章の中でみなさんに伝えたかったことは単に「休学をした方がいい」とか「学生は海外に出た方がいい」ということではない。時間は平等に過ぎ去っていく。であれば、自分の心惹かれる方に、まっとうな"人生のレール"からは少々外れたとしても、そちらの道に、進んでみるのもいいのではないかということである。それに、案外当たり前と思っていることも、当たり前でなかったりするのだから。

 もし、今回の文章を読んで何か新しい一歩を踏み出してくれた方がいれば、こう言いたい「今までと違った自分に出会えるかもしれないですね・・・」と。
 
プロフィール:
福本佳祐
早稲田大学= 現在休学中
運営ブログ:paboblog http://fukumoto-keisuke.com/
FBページ: Pabo blog Backpacker traveling  https://www.facebook.com/paboblog

記事一覧

フロンティア・フォーラムトップページへ戻る

アーカイブ