でもそれって、おもしろいですか？

　半年の自由時間をどこかの会社の下っ端として働いて、大学に入ってから学ぶことを、準備・予習と呼んで先に勉強する。そんなの、おもしろくない。折角の自由なのだから、もっと自分の世界を広げることに使おう。興味あることすべてに手を出してみようと考えました。

　4月の初め、バイトで一日が終わるような生活に終止符を打ち、憧れていた一眼レフカメラを買いました。グループブログを誘われてしていたけど、どうせなら自分でやってしまえと、個人ブログも作る（http://watapon-f1.com）。いわば、自分の世界をネット上に作っちゃったのです。これが意外と効果的で、様々な人と交流することができました。

　その後もバイトを最低限続けつつ、どこかへ行きたいという欲望を満たすため、まずは自転車で琵琶湖一周へ。次に東京へ一人でぶらり旅。予定を少な目に、少しの下調べのみで大都会を歩き回る。そこではリバ邸に行ったり、大好きなF1を観戦できるカフェに行ったりしました。でもここでお金を使いすぎないように。夏に最大のプランを用意しておきました。それが、東南アジアへの一人旅です。

　シンガポール、マレーシア、タイを2週間で回る旅。観光名所を巡るのもいいけど、急に海でのんびりしたいと思い、まだ観光開発されていないマレーシア東海岸の島、ペルヘンティアン島に行ってみたりしました。また、高校のときに仲良くなったシンガポールやタイの人と現地で再会するという機会も持てました。夢のような2週間。一眼レフを手に、何も知らない街を歩く。大学が始まってからじゃ、こんなのんびりした時間の使い方はなかなかできません。

　自分の思うままに過ごした分、もちろん弊害があります。それは勉強を怠ったこと。物理や数学の式などは、空気力学を専攻するうえで必須なのに、全く手を付けてません。しかし僕はあまり気にしません。大学に入れば、嫌でも勉強することになります。専攻に関する科目以外、手を付ける暇も少なくなる。ギャップイヤーというのは、自分を広げるための期間。そう考えた僕は、専門以外のことこそ今のうちに経験しておくべきではないかと思いました。

　自分の気が向くままに手を出していったギャップイヤー。旅に出ることもあれば、CIAについて興味を持ち調べてみることも。おかげで自分の中の世界は広がったと思っています。

　そんな"ぐちゃぐちゃ"なギャップイヤーでしたが、ある夜、面白いことに気が付きました。イギリスの大学に行く理由でもある「F1のエンジニアになりたい」という思いが、以前よりも強くなってることです。ギャップイヤー中は様々なことを経験し、幅広い物事に手を出しました。それらはすべて、自分の興味あることです。しかし実際に経験した今、やってみたけどあまり興味ないな、という物が多くありました。

　そんな中ふと、F1への興味が一番大きい。やっぱり自分にはF1しかないのだ、と分かったのです。なんとも説明しにくいものですが、それは脳科学者の茂木さんが言う「アハ体験」のようなもの。突然、脳の中の"ぐちゃぐちゃ"な回路が繋がるのです。

　そして楽しかったギャップイヤーも終わり。人は僕のギャップイヤーの話を聞いて、道草を食いまくってると思うでしょう。それは、勝手にそう思っといていい。それてるように見えて、僕は今でも夢に向かって真っすぐ進んでいる。さあ、3年前から夢見ていたイギリスでの大学生活がスタートします。広く、浅くはもういい。次は狭く、深く。夢に向かって頑張るとき。

（関連記事）
2014年5月23日付ＪＧＡＰフロンティア・フォーラム欄 No.168：「一度きりの人生、夢を全力で追いかけろ！」（川本 和さん、英国・サウサンプトン大学進学予定　※当時）-http://japangap.jp/essay/2014/05/post-77.html