「『ストリートダンスに、早慶戦があっていいんじゃないか!』から、実現しちゃいました」
柿澤英俊
(ストリートダンス早慶戦実行委員会・代表、慶応義塾大学法学部4年)
<自己紹介>
改めて、初めまして。ストリートダンス早慶戦実行委員会代表の柿澤と申します。
大学入学時より慶應義塾大学のストリートダンスサークルRevolveに所属し、Poppin'というジャンルのダンスをしています。
この度、縁があって2014年9月19日、上野恩賜公園野外ステージにて開催された、「第1回ストリートダンス早慶戦」実行委員会の代表を務めさせて頂きました。
ストリートダンスに関わる人はもちろん、様々な方に、僕たちの想いを共有できれば幸いです。
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「何故、プロにならなかったの?」と就活で聞かれる
僕は、大学1,2,3年と昼夜問わずダンス中心の生活を送ってきた。その結果、留年した。言ってしまえば、道を踏み外している。
そんな僕でも、時期が来れば就活をすることになる。
3月。初めての面接、大学生活の全てを費やして頑張ってきたダンスのことを、思いっきり話した。一通り話終わった後、面接官は僕に言った。
「そこまで頑張ったのに、プロにならなかったのは何故ですか?」
僕は、面接官を共感させられなかった自分の拙さを恥じると同時に、憤りを感じた。
隣の体育会の学生も僕と同じことを言っていたのに、僕だけになぜこの質問をしてきたのだろうか。
ストリートダンスの競技人口が、野球やサッカーに比べて比較的少ないので、競争率が低いということもあっただろう。しかし、ダンスが義務教育に取り入れられた今、その人口は1200万人とも言われている。決して少なくない数字だと思う。
何より、ストリートダンスのプロになるのと、野球・サッカーのプロになるのとでは、その努力値は全く変わらないはずだ。
その頃から、僕は「ストリートダンスの社会的地位の向上」というテーマについて考えるようになった。
ストリートダンスをもっと色々な人に楽しんでもらいたい
それは、就活も終わり、就活でお世話になった大学OBの先輩と食事に行った4月末のことだった。
「野球やサッカーの早慶戦って、そのスポーツをやっていない人でもすごく楽しんでいるよな。ダンスもそうなったら面白いよね。」
そう言われた時に、野球やサッカーの早慶戦の観戦に行った時の情景を思い出し、「ハッ」とした。
たしかに会場には、出身校愛にあふれる大学OB・OGの方々、サークルの友達、クラスメート、中学生、小学生などその競技をやったことのない人がスポーツを通じて一体となっている空間があった。
その瞬間、期末テストで答えが分からなくて飛ばしていた問題が、終了直前に解けた時のように、目の前が明るくなったのを覚えている。
先輩と別れた後、いつも一緒に練習している仲間達に、僕の想いを話し、ストリートダンス早慶戦実行委員会を立ち上げた。
史上初という壁!
「ストリートダンスにも早慶戦があってもいいじゃないか!」
「ストリートダンスをもっと分かり易くして多くの人に楽しんでもらいたい!」
「学生ダンサーに活躍の場を、増やしたい!」
という想いの下に、皆で意見をぶつけあい大会を形にしていった。
「第1回ストリートダンス早慶戦」は、動員数が1000人を超える点も、審査基準を設けるという点も、『史上初』という挑戦だらけの大会だ。
僕たちは、この「第1回ストリートダンス早慶戦」が、ストリートダンスの長い歴史において、新たなそして大きな1歩になる確信がある。
しかし、これまでなかったこと、誰もやったことのないことに挑戦するというのは、やはり簡単なことではなかった。
知名度が上がり多くの人が関わっていく内に、僕達の想いは伝わりづらくなってしまったこともある。実績のない大会に対してとりあえず様子見をする人、風習に縛られ頭ごなしに批判する人も少なくなかった。
自分がやろうとしていることの正しさに自信が持てなくなった時は、多くの方から頂いた応援メッセージを見て、自分だけの大会ではない、この第1回は絶対に仲間で成功させなければならないと、自分を奮い立たせた。
僕たちが伝統を創る~なんと、100万円を超える寄付も!
先日無事に終了した「第1回ストリートダンス早慶戦」は、事前イベントも含めると総動員約1000人の大会になった。クラウドファンディングでは112万円の寄付金を集めることができ、10社の企業協賛も得ることができた。
第1回は成功したが、会場、ルール改良、運営組織等々、今後の課題は山積みだ。今後5年、10年と続く伝統ある大会を創るためには、もっと多くの人を巻き込んでいかなければならない。そして、僕達の意思を継いでくれる後輩も必要だ。来年からは就活の時期が遅くなるために、上級生は動きづらくなってしまうからだ。
僕たちは既に来年に向けて動き始めている。
ストリートダンス早慶戦を伝統の大会にするために。
夢
僕には夢がある。
大好きなダンスをして、生きていくことができる世の中を実現することだ。
年々大学のダンスサークルの新入生は増えている。
僕の所属しているRevolveは、今年200人の新入生を迎えた。正確には、200人を超える人が入会を希望したが、運営の関係で200人で閉めきった。今後、学生ダンサーが増えていくのは間違いないだろう。
そんな学生ダンサーの大半は、社会人になるとダンスから離れてしまう。
ダンスで食べていけるならダンスを続けたかった、と企業に入社し、日々の業務に追われてダンスができなくなってしまった友人・知人を何人も知っている。今後、そうやって夢半ばで諦めてしまう人が増えていくのも間違いないだろう。
僕は、「ストリートダンス」の価値を高めることで、ダンサーの新しい働き方ができると考えている。
その第一歩がストリートダンス早慶戦なのだ。
ダンスに触れたことのない人が、ダンスを見て、実際に踊ることが当たり前の社会を創り、「ダンスが踊れる」ことが一種のステータスになる社会を実現することで、お金を稼ぐことが難しいと言われている今のダンスシーンを変えられると思っている。
「第1回ストリートダンス早慶戦」に出場したダンサー達のイキイキとした表情を思い出すと、そんな時が来るのも決して遠くはないと今からワクワクしてくる。
プロフィール:
柿澤英俊
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