代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「棚からぼた餅〜インドへの道、そこから前にのびる道」柳沼.jpg


柳沼 真衣(Yaginuma Mai)
インド国立ホメオパシー大学・インド政府奨学生

 はじまりは、始まりはおそらく生まれたときからだけれども、インドにつながる道を選んだ時ははっきりと自覚している。それは2011年3月11日。

 わたしは、宮城県仙台市で生まれ育った。地震が起こるちょうど30分前に就活のため、上京し被災。仙台の我が家は山側だったので、それほど大きな被害はなかった。しかし3.11は地震、津波だけではなく、原子炉のメルトダウン、放射性物質の拡散とクライシスは今なお現在進行形。あの時、交通手段もなく、実家に戻って貴重な食糧を減らす訳にもいかず、わたしは祖母の住む東京に残った。「なにもできない」ただ無力感でいっぱいだった。4年制大学を満喫しまくって卒業したものの、これといった専門的かつ実践的な力を身につけたわけじゃない。「なにかできるようになりたい」小さな確かな火がついた。

 まだ幼い弟と妹を連れて、大学生活を過ごした沖縄へ避難。あの時、そして今もきっとどこかで続いている議論と葛藤「地元を見捨てるのか」と。
 「少しでも健康でいられるように。いつか地元で役に立てるように」そういうつもりで沖縄で過ごしていたはずなのに、やはり同じ国内でも遠ければ情報に疎くなっていく。気持ちが離れていく。いつしか自分の沖縄での日常でいっぱいになっていた。そんな時、わたしを初めて社会人として指導してくれた人生の大先輩の言葉。「おまえ、こんなところでこんなことしてる場合じゃないだろ」と。一発奮起。ずーっと心の中で小さくくすぶっていた火。風が吹いた。

 日本での大学受験の時、第一志望は医学部だった。でも勉強足りずあえなく敗退、あっさりあきらめ。専門的で実践的ななにかって、やっぱりこれしかないと思った。医学の道。特に、子供達への放射能の影響が気になっていたこともあった。地元の友だちで仙台を離れた子はほとんどいない。むしろ震災以降、地元に戻ってきたくらい。これからきっとみんな母になる。友だちの子どもが苦しむのは苦しい。

 再び上京し、学士編入をするために勉強を始めた。でも西洋医学でいいのかなぁと迷いがあった。もともと自分は風邪をひいてもなるべく薬を飲まないし、なるべく手術もしないようにと生きてきた。それなのに西洋医学の医師になったら、わたしはそれを人に勧めるの?もっとこう、しっくりくるものはないか。

 そんな時、チャレンジャーな父はホメオパシーを試していた。なんと我が家きっての放射脳、食事には誰よりも気をつけていた父の体内に放射性物質が蓄積しているという。ホメオパシーのメディスンでその排出に成功。

 でもホメオパシー!?わたしは実は元アンチホメオパシー。一応理系だったので、というか理系じゃなくても、その額面通り受け取れば「希釈して元となる物質が含まれていない」ものが効くわけがない。意味がわからない。インチキ!エセ科学!

 ただ今現行の医学では、放射性物質を体から排出させる方法というのは確立していない。ガンになったら切って取って。あとはそれっぽいハーブとか、免疫力を高める食事とか。もしもしもし、もしも万が一ホメオパシーが有効な治療法なのであれば、棚からぼた餅!

 とネットでせっせと情報収集していると、なにやら今世界で最もホメオパシー教育が熱いとされるインドで、しかもインドの国費でホメオパシーを勉強できるらしい?!出願期間もかなりぎりぎりだったけど、とりあえず応募。各母校の事務のみなさんの作業の素早さよ!今思えば日本人のすばらしさ。インドではありえないスピード感。

 しかし、やっぱりホメオパシーはなんだかよくわからないし、実際に治療を試してみようにも、高いし、日本ではだれに診てもらえばいいのかわからないし・・・。思い切って、沖縄まで父を診察してくれたホメオパスの元へ。その方はホメオパシーだけでなく、鍼灸、操体法、アーユルヴェーダetc.とかなりいろんな療法を勉強して、日々診療にあたっている方。診療所は毎日大忙し!「更年期障害の患者さんがいてね、旦那さんの悪口を2時間くらいしゃべりまくるわけよー。どんなに話して励ましても止まらないさー。だからレメディを飲んでもらったら、ケロっとしてすぐ帰っていきよったよー」どんなネット上の情報よりも確信が持てた。よくわかんないけど、ホメオパシーでいってみよう!

 過去の成績やなによりも若さが評価されて、インド、コルカタへ。奨学生合格というぼた餅が落ちてきた。しかしそのぼた餅、苦い。ハード。全然甘くない!

 「インドで勉強している」というと旅行やヨガが好きな人には「いいなぁ」と言われる。でもわたしには何がいいのか正直わからない。「たのしい?」と聞かれれば「たのしいこともある」と答えるのが精一杯。「ほとんどがつらい」と答えたいのが本音。「だったら日本に帰ればいいのに」そういうわけにはいかない。知らない、わからない、未体験をひたすら受け入れることで無我夢中だった1年目。その状況を理解しつつも順応はできない、かといってインドを変えることなんて到底無理、忍耐また忍耐の2年目。日々は苦しいままだけど、それでも後ろを振り返ればここまで歩いてきた、もとい這いつくばってきた道がある。

 そして前方でわたしを照らしてくれているのは、インドのホメオパシーのドクター。インドにきてから、調子の悪くなる度、ここぞとばかりにホメオパシーを試してきた。腰の痛み、風邪、下痢と吐き気、爪が剥がれた時も、痔になったときも。(いずれも治療は無料)今までホメオパシーに裏切られたことはない。そう、ホメオパシーに助けられる度に、この道を選んでよかったと思う。インドにきてよかったと思う。そしてあんなドクターになりたいと強く強く思う。

 なんでもかんでもホメオパシーを勧めたいというのではない。骨折や手術が必要な場合は西洋医学が大活躍する。わたしは思う。どんな療法でも治ればいい。断食でもアーユルヴェーダでも中医でも。その選択肢の中にホメオパシーもまぜてほしいなぁ。きっと役に立つよ!なんせ妊娠中や授乳中も使えるし、正しいメディスンが選べれば副作用はない。それにホメオパシー業界用語で"治る"ということは、再発しないことを意味するのです。

 まだ大学2年生なので、インドでの学生生活はあと3年半。長い!このコースを修了したら、仙台に帰って、ホメオパシー健康相談所を開きます。最初はへっぽこだと思いますが、あきらめずに相談にきてください。ホメオパシーは信じるか信じないかではなくて、治るか治らないか。治らなければ、悪いのはホメオパシーじゃなくて大方そのメディスンを選んだ人です。残りのインド生活もつらいつらいと言いながら、がんばります!地元でホメオパシーの治療ができるように。人のためにみせかて、多分自分が一番救われるのだと思う。あのときの無力感、地元を離れた罪悪感、原発に無知無関心でいたこと。ホメオパシーで前向きにリベンジ!

さて、明日も授業だ!

プロフィール:
柳沼 真衣(Yaginuma Mai)
インド国立ホメオパシー大学・インド政府奨学生
2012年11月よりインド政府(ICCR)の奨学生として、インド国内で最もホメオパシーが盛んな街コルカタにあるインド国立ホメオパシー大学にて学び始める。(おそらく日本人として初めてのこと)
現在B.H.M.S (Bachelor of Homoeopathic Medicine and Surgery)という5年半の学部コース(1年のインターンシップ含む)の2年生。 まだ充分に情報になっていないインドのホメオパシーを、ありがたいことに日々五感で体験してます。
コース修了後は日本に帰国し、町の治せるphysicianになるのが目標!
FB: https://www.facebook.com/mai.yaginuma
mail: maipenlight@gmail.com
ブログ:baka positive!! http://homoeopathy.maipenlight.info/2015/01/blog-post_4.html

※私の1/4日付のブログ『これからインドにくる女の子へ』で紹介したことを以下紹介します。

これまでコルカタで生活してきてわたしが気をつけたこと、学んだことshareしたいと思います

インドで性的犯罪の被害者にならないために、気をつける16のこと
1.観光地ほど危険度が高いことを忘れない(サダルストリート、ブッダガヤはインドの中で危険度最強)
2.日本語を話すインド人には"絶対に"ついていかない
3.インド人の話す日本語には反応しない(目も合わせない)
4.自分も日本語は話さない(現地の言葉をしゃべったほうがカモられる可能性も下がる)
5.愛想は振りまかない、笑顔でこたえない
6.しつこいとき、うざいとき、めんどくさいときはどんどん無視する
7.それでもインド人に「悪いなぁ」と思わない(I'm sorryは禁句)
8.インド人を友達認定するのは1年付き合ってから(5分話して友達と思わない)
9.観光地で商売しているインド人のことは信じない(インド人同士でも「インド人のことは信じない」と言うくらい)(日本に友達がいるとか、日本で勉強したことがあるとか証拠品を見せてきても、真に受けない。むしろ余計怪しむこと。)
10.観光地で商売しているインド人におごってもらったり、親切にしてもらった場合、それは100%見返りを求めているからだと認識しておく。必ず背後に彼らの思惑があるはず。
11.自分もうそをつくことを悪いと思わない(素直に日本人であることを話す必要は全くない!)
12.生足は"絶対に"出さない(インドにおいては"レイプしてくれ"といっているようなもの)胸元も出さない(谷間は大事にしまっておいてください)
13.化粧もしない(化粧をしていると日本人だとバレやすい)
14.インドの女の子がしているような格好をする(最低でもストールを首もとにまく)
15.日が沈んでからは、一人で出歩かない
16.「自分は大丈夫」という思いは捨てる
(追記:インドの若い女の子たちは上記のこと以上に気をつけて生活をしている)

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