代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「グローバルマインドを身につけるためのギャップイヤーの活用」豊田さん.jpg


 私は現在、グローバル人材育成の一環として、日本の企業や大学から依頼を受けて、ビジネスパーソンや大学生を東南アジアやインドに連れて行き、実践的なビジネス研修を提供するという事業を営んでいます。

 20年前に留学コンサルティング会社を立ち上げ、以来15年間は主にアメリカの大学・大学院に留学する日本人のサポートを行っていたのですが、5年前に欧米からアジアの新興国にビジネスの場を移すことになりました。

 きっかけは日本の企業を取り巻くグローバルビジネスの状況が変わったことです。日本の内需が大きかった時代は、海外から安いものを仕入れ、あるいは海外で安く生産し、日本で売上をたてることができましたが、内需がどんどん減っていく一方、東南アジアやインドなどの新興国がますますマーケットとして大きくなっていく中で、多くの日本企業がそれらの国々に打って出ることになったのです。しかし、先進国ほど法律や規制が整備されておらず、また社会インフラも整っていない新興国では、日本でビジネスをしているような感覚では仕事が進みません。日本のように何でも揃っている国とは異なり、生活そのものも苦労があります。

 そんな中、企業でどのようなことが起こっているかと言うと、企業としてはマーケットを求めて新興国にガンガン攻めたいと思っているにも関わらず、そのような国々に行って仕事をしたい!と、手を挙げる社員がなかなか出てこないということです。「アメリカには駐在してみたいですが、東南アジアはちょっと...」とか「アジアといっても、シンガポールであれば仕事をしてみたいですが、インドはちょっと...」という具合です。また、実際に新興国に駐在したビジネスパーソンが思い通りに行かない状況にメンタルをやられてしまい、途中で帰任するというケースも出ています。

 では、どうすればいいのか?そこで、私に求められているのが、「そのような新興国でビジネスをやってみたい!」「そういう環境こそ面白そうだしやりがいがある!」というビジネスパーソンを増やすような研修です。

 留学事業を営んでいたときは、語学力を付けることや、英語でビジネスの知識を身につけることなどがゴールでしたが、今、必要とされているのは「スキル」や「知識」「語学力」ではなく、それ以前に「グローバルな環境でチャレンジしてみたい!」というマインドを強化することなのです。

 私たちはそれをグローバルマインドと呼びますが、具体的にどのようなマインドが求められているかというと、「どのような環境や状況であっても、それをそのまま受け入れ、その中で自分にできる最善を尽くして成果を出そうという心の持ちよう」です。新興国には日本とは異なる常識や考え方があり、また現地の人もこちらが思うようには動いてくれません。それは国が違うのだから当たり前です。でも、そんな中でも仕事で成果を出すためには、どうしようもないその状況を嘆くのではなく、上記のような心の持ちようが必要だということです。だから、それを鍛えるような海外研修を実施しています。

 私の研修に参加する受講生は20歳前後から40代と年齢の幅は広いのですが、1つの特徴は海外経験が少ない方が多いということです。そして、おそらくそれが1つの要因となって、TOEICのスコアが高い人でも、外国人とのビジネスコミュニケーションに自信がなく、なかなか一歩が出ないというか、手を挙げたり話しかけるという行動に躊躇してしまう傾向を感じます。

 その一方、語学力がそれほど高くないにも関わらず、何も躊躇することなくガンガンいくことができる人もいます。躊躇する人と躊躇しない人の差は「マインド」しかありません。まずはマインド、そして、そのマインドを受けての行動です。

 では、躊躇せずにガンガンいける人はなぜそうなったんだろう?と疑問に思って、いろいろと話を聞いて分かったことは、そのような人の多くは10代後半から20歳前後にかけての時期に、主にグローバルな環境下で自分を覚醒させるような「100%の力を出し切って何かを乗り越える」という経験をしていたのです。バックパッカー経験であったり、留学の経験であったり、経験の中身は人それぞれなのですが、「どうしようもない事態に直面したけど、何とか自分で乗り越えるしかなかった」という経験です。そして、それが小さな成功体験というか、「やればできるんだ」という自信に繋がり、さらに「やったらできた」という経験が、「もっとやれば、もっとできるかも...」という次のチャレンジに向かわせるのです。

 その意味で、私はギャップイヤーが果たす役割はすごく大きいのではないかと思っています。40代半ばの今となってみたら、若い時代の半年や1年は大したまわり道ではありません。むしろ、そのまわり道こそが後々にすごく影響を与えるとしたら、もし機会があればぜひそのような時間をつくり、海外で何かにチャレンジしてほしいと思うのです。

 今度、出版した新刊の「毎日がつまらないのは、どうしようもないことにくよくよしないラテンマインドが足りないからだ」は、グローバルマインドをラテンマインドと置き換えて、ちょっとふざけた感じで書いているのですが、伝えたいことは、まさに私自身が海外研修事業を通じていつも感じていることです。

 「やると言った事はきちんとやる」とか「時間は守る」とか「相手に対して誠実である」とか、良いところをたくさん持っている日本人。だからこそ、世界中から信頼をされている日本人。にも関わらず、どうしようもないことにくよくよして一歩が出なかったり、精神的にやられてしまうなんてもったいないと、常々感じているのですが、その思いの丈を「どうしようもないことにくよくよしないラテンマインドを持とう!」というメッセージに込めました。

 そして、そんなラテンマインドを身につける1つの方法、それがギャップイヤーの活用ではないかと思っています。

 良い旅を!そして、世界のどこかで会いましょう!

プロフィール:
豊田 圭一(とよだ けいいち)
株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役

1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチン(ブエノスアイレス)で過ごす。
1992年に上智大学(経済学部)を卒業後、清水建設株式会社に入社。1年間の建設現場勤務後、海外事業部にて工務部所属。
3年弱の勤務後、海外教育コンサルティング事業で起業。個人を対象にした留学コンサルティングや海外インターンシップ手配のほか、大手英会話スクールの留学事業立ち上げ、企業派遣留学のサポートなどに関わる。(〜2010年)
その傍ら、2003年にSNS開発会社、2005年に国際通信会社(海外携帯レンタル事業)も起業。2005~2007年には厚生労働省委託事業(委員会)の委員も務めた。
現在、グローバル人材育成のためのアジア新興国での海外研修事業、インドでの英語学校事業に従事している。

[スパイスアップ Group]
株式会社スパイスアップ・ジャパン(日本)、Spice Up Consultancy Singapore PTE LTD(シンガポール)、Spiceup India Pvt. Ltd.(インド)、Spice Up Vietnam Co. Ltd.(ベトナム)、サムライインターナショナル株式会社(日本)、Samurai C Ltd.(カンボジア)

[主な著書]
『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』
『なぜか好かれる人の考え方』
『自分がいなくてもまわるチームをつくろう!』
『何でもすぐ決めすぐ動く、すぐやるチームのつくり方』
『いま会社がなくなってもすぐ次が見つかる人になる33のステップ』
『仕事に追われる毎日を変えよう』
『引きずらない人は知っている、打たれ強くない思考術』
『毎日がつまらないのは、どうしようもないことにくよくよしないラテンマインドが足りないからだ』など、全15冊

[その他]
内閣府認証NPO留学協会(副理事長)
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所(招聘研究員)
All About [留学/人材育成・社員教育](ガイド)

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