代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「医学生が、なぜか休学してアフリカ旅してます」井口さん写真.JPG

井口明
秋田大学医学部医学科=2年次休学中、現在モロッコ 

医学生にとっての休学とは?
「1年間休学させてください」
 大学1年の昨年秋、休学申請手続きを始めた僕に対する反応はなかなか厳しいものだった。
・理由が何であれ、休学・留年で学年を下げることは、その後の実習などで不利
・秋田大学では医学教育のカリキュラムが年々改変されており、「遅れ」が発生するため、復学後に独学で学ばなければならない分野が出てくる
 上記のような具体的な「休学のリスク」を担任の先生や学科の先輩から延々と聞かされた。医師不足で騒がれる現代において、たかが1年されど1年で、医師として生涯労働年数を減らす行為は簡単には許容し難いようだった(幸いにも担任の先生の心ある理解と助力のおかげで、僕は「休学許可証」をもらえた)。

 大学に入学して1年間、僕が感じたのは"閉塞感"にも似た感情だった。批判するつもりは毛頭ないが、僕個人としては良くも悪くも医学科内で自己完結しているような風潮を感じずにはいられなかった。
 「このまま医療関係者だけの世界で自分の人生が完結してしまうこと」、それに僕は嫌な気がした。「良い医者」の定義は難しい。技術やプロフェッショナル意識、人間性、その他いろいろな要素を統合した優れた理想の医師像。「自分にとってのそれに近づくには、このある意味"居心地の良い空間"に浸っていては駄目なのでは?」そんな疑問と懸念もあり、最終的に休学という道を選択した。


なぜ旅なのか
 直接的なキッカケは高2の夏に旅したインドでの経験だった。たった3週間の短すぎる旅ではあったが、ただ楽しかっただけではなく、自分の人生に大きく、広く、深く還元された。「医者になりたい」、初めてそう思ったのもインドでのことだった。

  たかだか3週間のインドでおおまかな自分の人生の方向性が決まってしまったのだ。もし1年間、旅というツールを用いて未知の世界に身を置いたのなら、いったい何が得られるのだろうか、そんな妄想をするとワクワク感が止まらなかった。

 日本に固執していては得られない"得がたい"経験をしたい。様々な人と価値に出会いたい。そしてそれを全部スポンジみたいな今現在の心で吸収して、自分の常識の壁をぶち壊したい。将来自分の子供に"ドヤ顔"で語ってやれるような、一生の武勇伝を作りたい----そんな思いが僕を旅に駆り立てた。


なぜ"アフリカ一周"計画にしたのか
 独裁政治や民族・宗教対立、多くの危険と異文化、経済発展に伴う格差の拡大や伝統文化の消失、砂漠化などの大規模な環境問題や移民問題、食糧難による飢餓と想像を絶する貧困・・・「アフリカ」と聞いたとき、様々な混沌がイメージとして浮かぶ。日本においてもTVや本で紹介されることは多いだろう。
 それらはおそらく間違ってはいないと、何の根拠もないが、僕個人は思う。だがしかし、本当にそれだけが真実なのだろうか。"日本にとって距離も意識も最も遠い国々"---「自分自身の目でリアルなアフリカを見てきたい」そんな思いを強く抱いていた。
 
 また、将来自分の医療キャリアを展開するフィールドの1つとして、アフリカを視野に入れている、というのも理由の1つだ。
 「医療系の視点からアフリカを見たいのであれば、医師免許を取ってから行けばいいじゃないか」、そう何度も言われた。今の僕に医療知識はまるでないし、もっともである。
 だが、今年休学することは譲れないポイントだった。インドで多くを学んだが、「あの経験はあの時だったからできた」はずだ。あのタイミングじゃなかったら全く違った経験になってたかもしれないし、あるいはその経験自体ができなかったかもしれない。人生に強烈に影響することであればあるほど、なるべく早いうちに手を染めるべき。今の自分が学べることを学ぼう。そんな想いからアフリカ一周行きを決めた。


旅の途中に思うこと~肝心なのは「やるかやらないか」という二択
 と、ここまで散々偉そうに語ってきたが、僕の旅はまだ始まったばかり。何かを成し遂げたわけでもなんでもない。が、この1ヶ月の旅路を振り返ってみると、自分の選択は正しかったように感じている。
 所詮旅は人生を満たすエッセンスの1つにすぎない。肝心なのは「やるかやらないか」という二択ではないだろうか。自分自身とスゴイ人を隔てる壁は、案外シンプルなそういうところなんだと思う。
 
 カッコイイ言葉が並べ立てられた今風の啓発本に酔いしれたり、酒の席でデッカイこと語ったり、そんな自分に陶酔したり、それらに一体どれだけの価値があるのだろう。「やりたいことを、今、やる」、ただそれだけ。ギャップイヤーをするかどうかは当然個人の価値観とビジョン次第ではあるが、何かを成す大きなチャンスだと思う。
 
 これから先、何が起こり、何を学び、誰と出会い、何を思うのか、皆目見当もつかないが、芯は柔らかく根は固く、そして応援をしてくれている皆さんに対して感謝の気持ちを忘れず旅を続けたい。

プロフィール
井口 明
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ブログ:http://allaroundtheworld-planetearth.blogspot.com/
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メールアドレス:akiraiguchi32.planet.earth@gmail.com

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