代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

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「子どもたちのもうひとつの居場所 ~NPO法人フリーキッズ・ヴィレッジのこと~」

堀米 顕久
(大分大学医学部医学科・2012年度 BADO! 世界を旅するチェンジメーカー奨学生)

JGAPをご覧の皆さま、こんにちは。

「フロンティア・フォーラム」欄にエッセイを寄稿させていただきました、BADO!世界を旅するチェンジメーカー奨学生の堀米顕久と申します。

病気や障がいを抱える子どもたちの居場所づくりを模索して、国内・国外の医療施設・福祉施設・野外体験施設等への視察・ボランティアの旅をしながら情報発信を続けていますが、今回は今年の6月から7月にかけて日本国内で訪れた、長野県にある素敵な組織「NPO法人フリーキッズ・ヴィレッジ」についてご紹介させていただきます。


里山の自然の中での自給自足の大家族生活
 NPO法人フリーキッズ・ヴィレッジ(以下「フリーキッズ」)は、信州高遠の小さな山里の中にひっそりと佇んでいます。
ここでは、不登校やひきこもりの子どもたちが、フリーキッズのスタッフやボランティアたちと一緒に共同生活を営んでいます。親元を離れて共に生活する子どもたちは、高遠の地元の学校に山村留学として通ったり、あるいはフリーキッズでのフリースクールに参加するとともに、里山の自然の中での自由自足の共同生活を通して、人との繋がりを感じ、自然との繋がりを学び、生きる力を取り戻していきます。

 今回私はボランティアとしてこちらにお邪魔して、自給自足のための農業のお手伝いや、子どもたちの勉強や生活のお手伝いをしながら、3週間一緒に過ごさせていただきました。
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「共に暮らす」ということの意味 ~もうひとつの家庭~
 フリーキッズ代表の宇津孝子さん(以下「孝子さん」)は、ここで一緒に暮らしている子どもたちのお母さんです。子どもたちは皆、孝子さんのことを「かあちゃん」と呼びます。
 また、孝子さんは里親として里子を受け入れてもいるので、ここではフリーキッズに来ている子どもたちと、里子として受け入れている子どもたち、それにフリーキッズのスタッフとボランティアが一緒になって、自給自足の生活を共にしています。
 孝子さんは、子どもたちの「かあちゃん」として、第三者ではない本当の家族として、彼らの心と真正面から向き合っています。一人一人違った個性を持っている彼らのすべてを受け止めて、彼らが自分の足で立って、自分で考えてその人生を歩んでいけるよう後押ししていきます。

 私はこれまで、子どもキャンプや短期間のイベントで子どもたちと関わってきた経験は何度もありますが、様々な背景を持つ子どもたちと生活を共にする、「暮らしを共にする」というのは今回が初めてでした。今回一緒に生活させてもらう中で、そうやって生活を共にしていくことの難しさを感じながら、でも生活を通してでなければできないことがあるのだと、孝子さんやフリーキッズのスタッフの人たちが子どもたちとつくる関係性から感じることが何度もありました。そしてそれは、子どもたちがここに「お泊りに来ている」のではなく、ここが「かあちゃん」のいる「もうひとつの家庭」だからこそ成せていることなのだとも思いました。
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「キレやすい子どもたち」
ここでは、様々な背景を持った、様々な性格の子どもたちが共に暮らしています。例えば私はここに来て、ひょっとしたら生まれて初めて、いわゆる「キレやすい子どもたち」と呼ばれてしまっている子どもたちと向き合おうとしたのかもしれません。

「なんだよ、ちょっと悪いことしたらすぐ少年院行きだ少年院行きだって言いやがってよ」

「こいつムカつくな。殴っていいか?」

「お前ムカつくんだよ!」

 子どもたちの中には、時々感情が高ぶってそんな風に叫んでしまう子もいますが、それは必ずしも額面通りを意図してはいませんでした。彼らの心の奥の本音を聞こうと耳を傾けていると、彼らの言葉の裏側にある、寂しさや不安や不足に辿り着きます。

 そんなときに、周りの大人がただ反応して叱ってしまうのはきっと違うと思うのです。あるいは、その場を何事もなかったかのようにやり過ごしてしまっても、やはり彼ら自身のためにはなっていないと思うのです。でもフリーキッズでは、ここが「もうひとつの家庭」だからこそ、みんなが「もうひとつの家族」だからこそできることがきっとありました。
それは例えば、その場ですぐに無理やり抑えつけて解決しようとはせずに、本人が落ち着いて自分で考えられるようになるまで待ってあげられることだったり、落ち着いたところで個別に話を聞いてあげられることだったり、ここでは虚勢を張ったり気を張り詰めていなくても良いんだと安心感を与えてあげられることだったり...。そんな繰り返しの中で、子どもたちは冷静に自分の心と向き合い、人より少し揺れ幅の大きい自分の感情とうまく付き合っていくすべを自ら学んでいきました。
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フリーキッズ・ヴィレッジで3週間生活を共にして
 今回私がフリーキッズで生活を共にさせていただいたのは3週間という短い間でしたが、たったそれだけの期間でも、ここでの日々は言葉に表せないくらい濃い日々の連続でした。毎日数え切れないくらいたくさんの楽しいことがあって、そして困ったり怒ったりすることもたくさんありました。

 子どもたちは時に怒鳴り散らすことだってあったし、泣いてひきこもることだってありました。でも彼らは、本当に相手が嫌いだから怒鳴ったりするわけではありませんでした。本当はみんなとうまくやりたいのに、でも思ったようにいかなくて、そんな自分自身が嫌になって感情が溢れてしまう心の叫びが聞こえてきました。

 様々な過去や悩み、不安や痛みや不足を抱えた子どもたちは、どこか不安定で、アンバランスで、不器用な部分を持っています。彼らの心は、人よりも少し揺れ幅が大きくて、むき出しで傷つきやすくて、時に鋭く尖り、時に触れるのが怖いくらい繊細です。でも彼らは、実はもうそんな自分自身に気付いていました。そして、そんな自分の心とどう付き合えばいいかわからなくて、そんな自分を嫌いになりそうになりながら、それでも生きようとしていました。

 ここには、キレたからといってそれを頭ごなしに叱りつけるような大人はいません。
落ち着きがなくて自己中心的だからといって、怒鳴って命令したりする大人はいません。

 「ここは、少し周りと違う自分自身を受け入れて、そんな自分とうまく付き合っていくすべを学んでいく場所だから」

 様々な課題を抱えた子どもたち一人一人と向き合いながら、彼らが自分の力で自分自身を知り、受け入れて、付き合っていけるよう促していきます。

 ある子は、うまく自分の本心が伝えられなくて、高ぶった感情を不器用にぶつけながら、それでも分かり合いたいと願っていました。
そんな仲間を、別の子が時には恐れたり、時には慰めたり、時には笑い合ったりしながら、支え合おうとしていました。
そんな状況はお構いなしに、マイペースに突き進む子もいました。笑
でもそうやって、皆がここで共に生きていました。共に生きようとしていました。

 ここはそんな、従来の教育現場とは違う、医療や福祉の現場とも違う、オルタナティブな子どもたちの暮らしと学びの場です。私は「病気の子ども向け野外キャンプ」のボランティア経験から、金融業界から医療の世界へキャリアチェンジしましたが、「病気や困難を抱えた子どもたちの居場所づくり」を「野外キャンプ」よりもう少し広い視野で見たとき、そこには将来医療者になった自分が貢献できるかもしれない、貢献したいと心から思える場所がもっともっとたくさんあることに、フリーキッズでの日々を通して気が付きました。

(参考:NPO法人フリーキッズ・ヴィレッジ: http://www.freekids.jp/
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 以上、簡単ですがご紹介、ご報告になります。
ボランティア中の感想や、写真等については当方のブログ上に掲載しておりますので、ご興味のある方はそちらもご覧いただければ幸いです。
(参考:http://ameblo.jp/mylifeasapig/entry-11417702337.html

 また、もし本記事をお読みになりご質問等ございましたら、わかる範囲でお答えいたしますので、気兼ねなくご連絡をいただければと思います。連絡先:akihisa.tabi●gmail.com ←●を@に変更してください

プロフィール
堀米 顕久
2007年北海道大学農学部卒。有機農業2年・大手銀行勤務5年(札幌・鹿児島・福岡)を経て、現在は大分大学医学部医学科に在籍。銀行員時代の2008年、難病の子どもを対象とした子ども野外キャンプ(そらぷちキッズキャンプ)に参加しキャンプリーダーを務める。以降、同キャンプの参加を続ける 中で医学の道を志し、2011年10月に銀行を退職し大分大学医学部に編入学。2012年4月から1年間休学し、日本中・世界中にある病気の子ども向け野外体験施設・医療施設・福祉施設等の視察・ボランティアの旅に出る。また旅に際して、BADO株式会社から「世界を旅するチェンジメーカー奨学生」として 支援を受ける。将来は小児科医として働くとともに、病気の子どもを対象とした野外キャンプの実施や、子どもたちの居場所づくりについて模索中。

■「フロンティア・フォーラム」欄No.80:「子ども×自然×医療:銀行員は医師を目指して"旅人"になる」寄稿
http://japangap.jp/essay/2012/08/-2012-bado.html

■JGAP寄稿者短信:「病気の子どもと家族のための"滞在型アミューズメント施設"Give・Kids・The・World・Villageでの活動報告」
http://japangap.jp/info/2012/10/jgapgive-kids-the-world-village-where-happiness-inspires-hope-2012.html

■JGAP寄稿者短信:「世界で最初の小児ホスピス -英国ヘレン・ダグラス・ハウス- の視察報告」
http://japangap.jp/essay/2012/12/post-37.html

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