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多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「私が"育自分休暇制度"を利用してボツワナにいる理由」長山活動写真.jpg

長山 悦子
青年海外協力隊員@ボツワナ共和国

 退職しても6年以内なら会社に復帰できる「育自分休暇制度」を利用し、青年海外協力隊員としてボツワナで2年間のボランティア活動をしています。会社を辞める決断をした理由、ボランティア活動で得られたメリットについてお話します。


■ふとした思いつきから、20代最後の2年間をボツワナ共和国で過ごすことに
 「会社を辞めて、途上国で2年間のボランティアをしよう」と決めたのは、正直なところ、"なんとなく"でした。もちろん昔から途上国には興味・関心があったし、理系の化学者コースをドロップアウトして文系の国際協力大学院に進学もして、青年海外協力隊の説明会にも行ったことがありました。でも、当時20代後半、社会人3年目の私には「絶対に行かなければならない理由」はなかったんです。会社が好きだし、自分の仕事にやりがいがあって、お客様にも思い入れがある。ボランティアも趣味でやっていて、日本の田舎をPRする活動を3年続けていました。仕事を辞めたいわけでもなく、途上国の人たちの役に立ちたい!という熱い思いがあるわけでもない私が、なぜ20代最後の2年間をアフリカのボツワナ共和国で過ごすことになったのか。そのきっかけは、会社帰りにふと浮かんだ「思いつき」からでした。


■2足のわらじのジレンマ。迷わず「仕事」を選ぶべき?
 社会人3年目、仕事もプライベートも楽しく満足していた私ですが、ひとつモヤモヤとした不満がありました。それは、仕事と趣味のボランティアとの2足のわらじの両立がだんだんと難しくなってきた、ということでした。3年目にもなると、会社ではだんだんと大きな仕事を任されるようになり、また自分で立ち上げたボランティア活動の方もメディアに取材されるなど注目していただけるようになっていました。ただ、そうなってくると「仕事もボランティアもどっちも頑張りたい。もっといろんなことができるのに。でも、時間が足りない・・」というジレンマに陥りました。

 そこで模範的な社会人だったら、迷わず「仕事」を選ぶと思います。仕事の予定は、プライベートよりも優先されるべきなのが、今の社会の価値観です。ただ、私が新卒で入社したサイボウズという会社は、一般的な価値観とは少し違う会社でした。サイボウズには「働き方は多様であるべき」という考え方が浸透していて、時短勤務や育休6年など働き方に関するユニークな制度がたくさんあります。「育自分休暇制度」もそのひとつです。

 「育自分休暇制度」は、一度退職した後に6年以内であれば再び入社できるという制度。会社を辞めて、何をしても自由です。大学に通ってもいい、他の会社で働いてもいい、世界一周旅行に行ってもいい。そして、いろんな経験をして、また会社に戻ってきて働くことができる。もちろん、戻らなくてもいい。

 2足のわらじに限界を感じてモヤモヤしていた頭にふと浮かんだ、「育自分休暇でもとろうかな」という、思いつき。これが私をボツワナに導きました。「絶対に協力隊に行きたい理由」はない。でも、同時に「育自分休暇をとらない理由」もなかったんです。最初は自分でもこの決断に自信がありませんでしたが、まずはこの面白い思いつきを、信頼する友人、上司、そして家族に話してみることにしました。すると、周囲は自分以上にその冒険的な決断を応援してくれました。

 もちろん、全ての人になんの迷いもなく送り出されたわけではありません。社内で「人材の流出ではないか」という声があったり、おばあちゃんに「そんな危ないところに行くのはおやめなさい」と心配されたり、自分自身、周りの友人たちが結婚や出産をして家族をもつのをみて焦る気持ちや、2年たって戻ってきたら後輩のほうが仕事できるようになってるんじゃないか・・と不安になる気持ちもありました。


■会社を辞めてボランティアに専念した理由
 でもその時、私はどうしても、本気でボランティアをやってみたいと思ったんです。ここでいう「ボランティア」は、「自分が関心のある社会課題について、誰に強制されるのでもなく、自ら考え、行動し、成果をだすこと」です。

 20代前半、やっと社会に関心を持ち始めたばかりの学生だった私は、目の前に立ちはだかる社会の問題に対して、なんの影響力もありませんでした。でも、社会人になって3年、「今の自分なら、何かしらの成果をだせるはずだ」と、自分を試してみたいと思いました。「あの時の、なんの力にもなれず泣くことしかできなかった残念な自分に報いたい」、それが私をボランティア活動に駆り立てた一番の理由です。

 もうひとつ私がボランティアにこだわる理由は、それが自分を成長させてくれることを知っているからです。私は社会人になってからプロボノとして複数の団体でボランティア活動をしてきましたが、そこで得た人脈、仕事の仕方についての学び、周囲を巻き込んで社会にインパクトを与えるためのヒント・・など、会社で働いているだけでは得られなかったものがたくさんあります。「ボランティアの活動を止めたくない。でも今の仕事も捨てたくない」このわがままを叶えてくれたのが、育自分休暇制度でした。


■ボランティアの経験が仕事に活きる
 "もっと成長したい"という20代後半のモヤモヤ、そしてその願いを叶えてくれた会社の制度のおかげで、私は今ボツワナで、思う存分ボランティアに打ち込んでいます。

 ボツワナの地方の役所でコミュニティ開発部のメンバーとして働き、失業率の高い農村部で雇用を創出するための仕事をしています。村の女性たちと一緒に「クラフト制作・販売のプロジェクト」を立ち上げて約1年が経ちました。2015年からは日本へのアクセサリーの販売も始め、安定的な売上・収入を得られる体制づくりに奔走しています。

 ボランティアに打ち込む2年間は、帰国後の自分のキャリアにも役立つと感じています。英語と現地語でコミュニケーションをとらなければいけない新規事業のたちあげの経験は、会社が海外へ進出している今、必ず役に立つはずです。また、海外でのビジネスの経験だけでなく、もっと基本的なところで「自分の強みを再認識できる」「自立心が育まれる」といった効果もあると感じています。会社の上司の目の届かないところで自由に自分の力を発揮するのは、失敗も多いですがそのぶん得られる経験値も大きいです。上司や先輩社員のアドバイスがないと動けない"新人"はもう卒業し、帰国後には「自ら考え、提案し、周囲を巻き込んでプロジェクトを遂行できる」力強さをもって、会社に戻りたいと思います。

プロフィール:
長山 悦子
青年海外協力隊員@ボツワナ共和国
FB:https://www.facebook.com/nagayamaetuko

(関連情報)
ボツワナで立ち上げたクラフトビジネス"Gift from Botswana"
ツェレ村の女性たちのつくるアクセサリーを日本で販売しています。
http://giftbotswana-japan.jimdo.com/

Facebookページ:
https://www.facebook.com/giftfrombotswana

英語版サイト:
http://giftbotswana.jimdo.com/


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