代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「大学生はモラトリアム。人生で唯一、何もしていなくても、何をしていても、いい期間」


加藤順彦ポール
エンジェル事業家 LENSMODE PTE LTD/関西学院大学商学部 非常勤講師)


 僕の大阪の実家は、第二次世界大戦後、間もなく創業した鋼材の特約店でした。
新日鐵や日本鋼管が造った、主に建設等に使われる鋼材を三菱商事や住友商事から仕入れて、それを工務店やゼネコンに売る、倉庫業と小売業のような業態でした。

 僕は創業者の長男(2代目社長)の長男(跡取り)といった生まれだったので、小学校の頃から漠然とですが、将来経営者になるんだ、という意識がありました。だから大学受験も、商学部、経営学部がメインで、大学に入ったら経営の勉強をしよう、とか真面目に思っていました。ところがケインズを読んでも実際の商いには何の役にも立たないことに、入学してから気がつきました。
入学早々、五月病になってしまいました。

 そんな日のことです。
「大学生の4年間はモラトリアム。人生で唯一、何もしていなくても、何をしていても、いい期間なんや」
僕はこのコトバを、大学のサークル新歓説明会場で、そのへんのセンパイから聞かされ、ハンマーで殴られたよな衝撃を受けました。

 そのサークルにはなんの興味もありませんでしたが「モラトリアム」というコトバに無性に惹かれ、そのまま立ち止まって、他の学生に熱心に説明するそのセンパイの同じ話を繰り返し、立ち聞きしていました。

 モラトリアム(moratorium)とは「しばらくの間やめること」を意味します。
元来は金融法律用語で、戦争・恐慌等の非常時に社会的混乱を避けるため「金銭債務の支払いを一定期間猶予すること」を指します。それを心理学者エリク・H・エリクソンという人は『大人になるために必要な猶予期間』と概念定義していました。

前田健太さん写真me.for.jpg「2週間の"サンフランシスコ語学留学"をきっかけに変わった自分」

前田健太(まえだけんた)
岡山大学経済学部経済学科4年生。岡山大学の交換留学派遣プログラムを利用し、2012年7月からNY州立ストーニーブルック大学に交換留学中。

今何をしてるか?!
 ニューヨーク(NY)のロングアイランドにあるNY州立ストーニーブルック大学に、大学の交換留学派遣プログラムを利用して、国費留学生として来ています。秋と春の2セメスターをここで過ごし、来年の5月に日本に帰国予定です。


昨年の春休みにサンフランシスコで過ごした2週間が"きっかけ"
 大学に入学して以降、バイトとサークル活動ばかりに生活の重点を置いていた僕は、絶えず何か"焦燥感"のようなものを持っていました。行動を起こすなら今しかないと直感的に思い、去年の大学2年の春休みに2週間サンフランシスコ(SF)に語学留学することにしたのです。そしてそこでの経験が現在の僕を形作る上で多大な影響を持つことになります。

 とにかく未知の経験の連続でした。「外国人が普通に街を歩いている」、普通に考えれば当たり前のことなのですが、当時の僕にはリアルな多様性を飲み込むのが容易ではなく、ベッドに入るやいなやその日の疲れから、毎日泥のように眠っていました。また3月13日に向こうに行ったのですが、とあるレストランが「3・21に支払われた金額はすべて日本に寄付します」と書かれた看板を掲げていたり、出会う外国人には「あなたの家族は大丈夫だった?」と聞かれないことのほうが少ないくらいでした。


橋本さん写真.jpg「 慶應辞めて、オイルマネー沸き立つアブダビにある設立3年目の大学に入学します」

橋本 晋太郎 (19歳)
慶應義塾大学法学部退学後、2012年8月New York University Abu Dhabi校入学。Computer Science専攻予定。

まず、ニューヨーク大学アブダビ校とは?
 脱石油依存経済を掲げるアブダビ政府が、知識基盤経済への移行のための戦略の一環として 全面的な資金援助をし、ニューヨーク大学が2010年に設立した総合大学です。アラブ首長国連邦の首都アブダビ(ドバイの隣の都市)に位置しています。
莫大なオイルマネーをバックに、世界中から優秀な学生や研究者、教員をリクルートし、現在2学年320名ほどで60ヶ国以上の国籍の学生が在籍しています。今年1月の最終選考会でアブダビに招かれた時(旅費など費用は全額支給)には、学生のダイバーシティ(多様性)に驚かされました。エチオピアの元ストリート・チルドレンから、米国名門私立高校出身者まで多種多様な様々な学生が一同に会していました。

 ニューヨーク大学の分校という位置づけですが、入学選抜プロセスが別であるなど、ニューヨーク本校とは多くの違いがあります。授業は英語で行われます。


「若者はcomfort zone を越えろ~彼女の葬式で自殺を考えた人間が、北米白人社会に挑戦しながら思ったこと」


やす
※ICUから米国・リベラルアーツカレッジに編入。バンクーバー神学大学院、トロント大学大学院を経て、現在シンガポール在住


生年月日が同じだった彼女の死
 高校を卒業した年の秋、高校時代に付き合っていた人が亡くなった。高2のときに彼女のガンが発覚してから、目まぐるしく色々なことが起きてしまった。現実はドラマのように単純じゃない。色々な人や問題が入り込み、僕は彼女と別々の道を行くことを余儀なくされ、ある日、一本の電話で、生まれた日が全く同じだった彼女の死を知らされた。

 生まれて初めて本当の悲しみや混乱や怒りを体験したのが、この頃。自分と同じ日数を生きてきた彼女が突然消え去り、自分だけが月日を重ねていく日々。人生でただ一度、自力で立ち上がる力さえも砕かれた。


「僕の"留学のススメ"~"18歳の国会議員"がいるスウェーデンにいるワケ」両角さん写真.jpegのサムネール画像

両角達平
(静岡県立大学 国際関係学部4年=休学中)
※Stockholm University (スウェーデン) 留学中


「NHKクローズアップ現代」に自分がとったアンケートが紹介されている!
 今年4月11日のNHK「クローズアップ現代」で「18歳は大人か!?~ゆれる成人年齢引き下げ論議~」が放送された。内容は、未成年住民投票、スウェーデンの若者団体、未成年模擬選挙などであった。スウェーデンに留学中の僕がこの番組のテーマを知ったのは、日本にいる友人のTwitterでのつぶやきからだ。
「自分たちが社会に影響を与えられると感じている若者の割合は、日本が24%であるのに対し、スウェーデンは65%に上っています」

 これを見た僕は、持病の椎間板ヘルニアが再発せんばかりにびっくりした。なんとこのデータは2年前に僕がスウェーデンでとったアンケート全く同じ結果だったからだ。それもそのはず、ニュース・ソースは僕が所属するNPOに取材依頼がきていたからだそうだ。このアンケートは2年前のゴールデンウィークにスウェーデンに訪れた際に、首都ストックホルムの駅前でとったものと、別の日に同じアンケートを静岡でとったものとを比較したものだ。このアンケートの結果を裏付けるように、スウェーデンには若者が社会に対して影響を与えることができる機会が豊富にあることを、この時に参加したスタディツアーで目の当たりした。このスタディツアーではNHKで出てきた若者団体や、若者政策を担う省庁や学校、余暇施設などを訪ねてインタビューを行い、いかにスウェーデンの若者の声が社会に届いているのかを実感した。現に昨年、世界最年少18歳の国会議員が誕生したのは記憶に新しい。日本でもこうなったらいいなと思い、スウェーデンでの秘訣を探るために、このとき僕は留学を決意した。


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