「26歳の私が日本社会の用意してくれたレールから降り、妻と2人で世界一周の旅に出た理由」
西村祐紀 @夫婦で世界一周中
私は現在、妻と二人で世界一周旅行をしています。
世界一周という言葉の響きから、それが何か大それたことのようにも聞こえますが、実際にはそんなことはありません。必要な情報はどんなものであれインターネットを使えば簡単に見つかる今、個人旅行の困難性や、それに伴う冒険性は激減したように思います。
そんな中、世界遺産や絶景スポットなどに興味があるわけでもない私が、日本での暮らしを捨て、この旅行を始めた理由についてまずお伝えしたいと思います。
私が世界一周旅行に出た理由
私が大学を卒業後に約4年間勤めた会社を退職し、世界一周旅行を始めたきっかけは、学生時代に何度となく経験した"旅"にあります。
パンの耳を恵んでもらいながらママチャリで日本一周をしてみたり、アジアを貧乏旅行しながら世界の現実に触れる中で、日本社会の用意したレールをある程度鳥瞰し、自分の論理による価値観を育て、それを実行に移す勇気をも、そういった学生時代の旅行から学び取ったように感じます。
会社勤めをしていた頃は、幸運にも上司や同僚に恵まれ、居心地は全然悪くありませんでしたし、その暮らしに苦痛はありませんでした。
ですが、その生活も四年目に入った頃には、学生時代に私が強く想った目標へのスタートを切れるだけの資金が手元に残り、それ以上会社員であり続ける理由が無くなりました。お世話になった会社に別れを告げることは、やはり心苦しいものがありましたが未練はありませんでした。
私の目標とは、幸運にも先進国に生まれ、高等教育を受けた人間の役割として、どんなに小さな一部分でもいいから、世界を自分の手で良い方向へ変えたいということです。
フワフワした戯言にも見えますが、行動を起こす軸としてはこれで十分だと私は考えました。
従って、私にとっての世界一周とはその舞台、つまり"第二の母国"ともなり得る新たな活動場所を探す旅であるとも言えます。
幸いなことに、私がまだ学生だったころにマレーシアで知り合った妻もそのような生き方には共感を示してくれて、2人で旅行に出ることが出来ました。
日本を離れて半年以上経った今思うこと
当初、3年くらいかけて世界中を周れたらと思い出発した旅も、気が付けば半年以上の時が経ち、まだ7か国しか訪れられていない私たちがいます。
そもそもの目的が、観光地を効率的に回りたいわけではなく、むしろ普通に生活するようにのんびりと、じっくりと一見何もないような都市にとどまってこそ近づくものだと思うので、これはある意味仕方のないことなのかもしれません。
例えば東ティモールのディリには3週間ほど滞在し、その間にJICAの青年海外協力隊員さん達と知り合い、興味深いお話を伺うことも出来ました。
当分尽きることのないだけの預金があっても、収入の無い身分というのはやはり辛いもので、絶えず将来に対する不安にさらされます。
ですがそれは自らが望んで得た立場でもあるため後悔にはつながりません。
何より日本にいた時の、会社員という社会的身分を持つ安心感から生じる、仮面、又はフィルターをまとって、目の前に靄がかかったようなもどかしい感触から解放され、今は何者でもないむき出しの自分が世界にさらされているという感覚を、心地良く受け止めています。
学生時代に途方もなく遠い目標に向かい、頼りないママチャリのペダルを一生懸命漕いだあの日と同じように、誰に押し付けられたわけでもない、自分だけの目標に向かって日々を紡いでいられることを幸せに、そして小さくこっそりと誇りにも思いながら、かけがえのない今を過ごしています。
プロフィール:
西村祐紀
1988年2月26日生まれ
2014年1月より夫婦で世界一周中
ブログ:日本人が一生行かないディープな床屋だけで散髪しながら世界一周してみた。
→http://tokoya-travel.info/
Twitter:@tokoyatravel